おくりびと | Promised Land -帰りたい何処か-

Promised Land -帰りたい何処か-

わたしにとっての「約束の地」はどこなのか?

その答えを今探しています。

「おくりびと」


ずっと見たいと思っていた映画。
私の住む田舎町のそれほど大きくない映画館でも1ヵ月半前くらいから
上映するようになったので、見に行ってきました。。



東京で所属していたオーケストラが解散することになって
失業してしまったチェロ奏者・大悟は、妻を連れて山形の実家に帰ることに。
そして、そこで見つけた仕事は、死んだ人を棺に納める、「納棺師」。



いろんな人たちを送り出す中で、いろんな葛藤が起こる。
そして、その中で自分の身近な人たちを送り出す大悟。



「納棺師」という仕事は、なかなか大変な仕事だけれど、
亡くなった方を最期に敬意を持って送り出す仕事。
大悟やNKエージェントの佐々木社長の仕事ぶりをみて、
「プロ」のする仕事はいわば芸術的ですばらしいとさえ思いました。



作品の前半はコミカルな展開が多く、結構笑えましたが、
話が進むに従って、
大切な人を送り出すことの意味、について考えさせられました。

もう涙腺、大決壊でした。


私も過去に、大切な人を亡くしました。
当然、納棺もした(したのは多分葬儀屋さん)わけですが、
何故かその時の記憶がありません。
あるのは、お通夜のことと、お葬式の断片的な記憶。
焼き場(葬場)での最期のお別れと、待っている時間。そしてお骨拾い。


今でもあのころの記憶があいまいです。
突然に近い死でしたから、きっと自分が壊れてしまわないように、
自分の中のどこかの装置が作動して、思考回路が明晰に働かないように
なっていたのではないかと今は思います。


お葬式の、棺を閉じるとき、最期に故人の頬に触れたときの、
まるで蝋人形のようなひんやりとした冷たさが今でも忘れられません。
姿は生きていた時そのもので、また目をあけて今にも起きてきそうなのに、
それは決してないんだと、リアルな説得力を与える冷たさ。
そこにはっきりと人の「死」を生まれて初めて感じたのでした。


日常的に、その冷たさを感じながら人の最期を送り出す納棺師。
とても大変な仕事だと思います。
だけど、最後の方で大悟の妻の美香も認めたように、立派な仕事だと思います。



これから先、順当にいけば、私はまた何人かの大切な人を送り出すことになるでしょう。
そして私もいつか送り出される日が来るでしょう。



そんな時、大悟や佐々木社長のような素晴らしい納棺師に出会えたらいいなと思いました。