やくそく | Promised Land -帰りたい何処か-

Promised Land -帰りたい何処か-

わたしにとっての「約束の地」はどこなのか?

その答えを今探しています。

「嫌われ松子の一生」の著者である、山田宗樹の「ランチブッフェ」の
中に収録されてる作品の一つ。


重い心臓病を持った恋人・理紗と、いまわの際に約束したこと・・・・


「今度生まれ変わるときは、健康な体になって、
 徹也くんにきっと会いに行く。
 ずっと一緒よ。やくそくよ」


死に別れた恋人のことを乗り越え、その後出逢った諒子と結婚した徹也。
そして諒子が妊娠したとき、不思議なことが起きる。


おなかの子どもの泣き声のようなものが聞こえたり、
妊娠線で「てつやくん やくそくよ」と浮かび上がったり、
愛し合っている最中に、諒子ではなく、まるで理紗のような振る舞いを諒子がしたり、
そして、諒子が唐突に、生まれてくる女の子の名前を「理紗」にすると決めたり。



生まれてくる子どもが死んだ恋人の生まれ変わりなのか、と思うと複雑な心境になった
徹也だったが、いざ生まれて、わが子を腕にした瞬間、
その迷いは消え去った。

この子は俺の娘で、俺はこの子の父親、それだけでいい、それで十分だと。



理紗が5歳になったある夏の日、公園で3人で遊んでいた。
諒子がアイスを買いに行っている間、徹也は理紗にたずねる。
「理紗、楽しいか?」と。


理紗はそれには答えずに、それまで浮かべていた子どもらしい笑顔を消し、
やがて目に艶やかな輝きを持ち、口元を少し緩めてこう低く囁いた。
「徹也くん」と。



徹也は、黙って理沙を見つめた。そして笑みを浮かべてうなずき、
小さな手を握り返した。


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物語はここで終わっている。
自分の娘が死んだ恋人の生まれ変わり、というのは複雑な気持ちかもしれないが、
死んだ恋人・・理紗にしてみれば、これ以上の幸せはないと思う。
もうこれからずっと一緒にいられる。ずっと愛されて。
気味の悪いミステリーにもとれるかもしれないが、
私には、必死で生きぬき、死をもって別れてしまった恋人と、
来世でこんな形で会えるなんて、ロマンティックだと思えた。


愛する人と一緒にいられる幸せ。たとえ形が変わったとしても。