白夜行 | Promised Land -帰りたい何処か-

Promised Land -帰りたい何処か-

わたしにとっての「約束の地」はどこなのか?

その答えを今探しています。

この作品は20年ほどの時間と共に展開される。

 

20年前の質屋殺しの件から始まり、
次第にある二人の人生に沿って物語は進んでいく。

 

始めは、あまりに沢山の人物が時代の狭間から出てきて、
ぼんやりとその情景を眺めているような印象だった。
だが、次第に色々なことがつながり始める。
その過程で、いくつかの事件が起こる。
恋愛絡みから殺人に至るまで。

 

この物語の根底は、桐原亮司と唐沢(西本)雪穂の二人の
辿らざるを得なかったいわば運命のような事件である。
本来なら子供を守ってくれるべき親の犯した過ち、
そして、
それを目の当たりにした彼らの悲しみ、憎悪。

 

それぞれの唯一の心の安らぎの場所であった図書館。
その近くの廃ビルで起こった事件から、
二人の人生は、悲しい運命を辿るものになってしまう。

 

物語の中でこんなくだりが出てくる。

 

「彼等は自分たちの魂を守ろうとしているだけなのだ。
 その結果、雪穂は本当の姿を誰にも見せず、
 亮司は今も暗いダクトの中を徘徊している。」

 

20年前の質屋殺しの犯人は不明のまま時効を迎えた。
だが、そのために、その後多くの人たちが不幸になった。

 

しかし、一番の不幸は、

やはりこの二人の運命だったのかもしれない。

 

最後、亮司は自らの運命を変えた鋏によって、命を断つ。
その変わり果てた姿を白い影のように見つめる雪穂。

 

二人は、最後まで共依存・・
(笹垣刑事の言葉を借りるなら「エビとハゼ」の関係)

姿をみせないけれども、必ず亮司は雪穂のそばにいた。


そんな二人の最期の別れ。そこで物語は終わっている。

雪穂はこの先も、警察に色々な罪を問われることには
ならないが、この先、彼女の心はどんな風に
なっていくのだろうか。


ある意味、雪穂にとっての亮司は、
ほかの誰よりも彼女の理解者であり、
かけがえのない運命の人だったのかもしれない。
それが不幸なものだったとしても。

 

その彼を失った雪穂の心が、気になった。
表面上はそれまでどおりの人生を無論歩んでいくのだろうが。

 

 

この「白夜行」は、「幻夜」と少し傾向が似ている。
どこが似ているかといえば、表舞台に立つ美しき優秀な
女性と、それを影で支える男性中心のストーリー設定。
そして、男性の死をもって終わるところ。


ただ、個人的には「白夜行」の方が好きだ。
それは、桐原亮司や唐沢雪穂のことが、
「幻夜」で登場する美冬と水原よりも理解しやすく、
特に桐原亮司という人物に興味を惹かれたことが
あるかもしれない。

 

 

東野作品は、心を病みかかっている私には
あまりいい影響を与える本ではないかもしれないと
思いながらも、

それでも、私は止められない。


そう、まるで麻薬のように。