日本経済新聞によると、3メガバンクは2025年度中にも紙の約束手形、小切手の発行を終了するそうです。
三井住友銀行は2025年9月に既存の当座預金口座を持つ顧客向けの手形・小切手帳の発行を取りやめ、他のメガバンクも終える予定です。
取引先の企業は電子決済や銀行振り込みへの移行が必要になり、明治期以来、根強く続いてきた紙を使った商慣習は転機を迎えます。
約束手形は企業間取引の代金決済方法の一つで、将来の代金支払いを約束する有価証券を指します。
受取人は指定された期日以降に金融機関に手形を取り立てに出し、現金に換金できます。
経済成長期には手元資金に余裕のない発注企業の資金繰りに役立ってきましたが、近年は入金の遅さなど紙媒体に依存した決済の弊害が目立ってきていたのです。
三井住友銀行は、先日、2025年9月に既存の顧客向けの手形・小切手帳の発行を終了する方針を公表しました。
既に新規の当座預金口座の開設者への発行は停止しており、2026年9月末を手形、小切手の決済期限としています。
2026年10月以降は手形、小切手を使った決済ができなくなります。
未使用の手形、小切手帳は希望者を対象に、買い戻しを実施します。
2025年10月から決済時の入金に1件660円の手数料を新たに設けて移行を促します。
三井住友銀行で紙の約束手形や小切手を利用する企業は、中小企業を中心に約5万社にのぼります。
2023年度は同行だけで約170万枚の決済実績があり、金融界全体では年2,500万枚規模の取引がありました。
三菱UFJ銀行とみずほ銀行も近く手形、小切手の発行を終える日程を公表します。
発行済みの手形、小切手の扱いなどを詰めていますが、既存の顧客向けの手形・小切手帳の発行終了は2025年度中にも実現する見通しです。
3メガバンクが足並みをそろえることで、地方銀行なども今後追随する可能性が高いでしょう。
手形の交換は信用金庫、信用組合などを含め1,000超の金融機関が参加しています。
3メガバンクは今後、手形や小切手を使ってきた企業に対して代替サービスへの移行を促します。
インターネットバンキングによる振り込みや、決めた期日に金融機関の間で代金を自動送金する「電子記録債権」など電子取引が中心となります。
電子記録債権は紙の手形のように第三者に譲渡したり、融資を受ける際の担保として利用したりできます。
紛失や盗難のリスクもないため、メガバンクは企業決済の効率性や安全性が高まるとみています。
電子記録債権の利用実績は2023年に約700万件と紙の手形・小切手に比べ少ないものの、利用件数は年率2割のペースで伸びています。
手形は期日まで代金の支払いが猶予されることから、企業の資金繰りの緩和に役立ってきました。
ただし、大企業を中心に決済の電子化が進み、近年は利用の減少傾向が目立っていました。
政府も2021年の成長戦略実行計画で、手形の利用廃止や電子化の促進を打ち出していました。
メガバンクが実際に手形や小切手の発行を終えることで、中小企業の金融取引でも紙から電子への移行が決定的になります。
ところが、企業間取引を電子化するには、買い手と売り手の双方が同時に対応する必要があります。
中小企業の資金繰りへの影響を抑えるには、下請けの代金を適切な条件で支払うなど大企業を頂点とするサプライチェーン(供給網)全体への働きかけも欠かせません。
海外ではシンガポールが2025年末までに企業間の小切手のやり取りを廃止する予定であるほか、米欧でも銀行振り込みや電子決済への移行が進んでいます。
世界的に電子決済への移行は不可逆的な流れで、手形や小切手の廃止がその流れを加速することになります。
▼約束手形
将来の支払いを約束する有価証券のこと。
支払期日を指定して手渡すことで買い手の企業にとって支払いまでの資金繰りに役立つほか、売り手にとっても手数料を支払って代金を先んじて受け取れる利点がありました。
明治時代の手形交換所以来の日本独特の商慣行で、経済成長期には企業の資金不足を補う役割を果たしました。
ただし、近年は銀行での振り込みなどの支払いが主流の欧米に比べ支払いまでの期間が長いといった弊害も目立ってきました。
「紙」でのやりとりが必要になるのも難点で、紛失などのリスクがあったのです。
デジタル化を進めたい政府の方針も背景に、全国銀行協会は手形や小切手の電子化に向けた対応を進めてきました。
支払期日を指定して支払う仕組みの代替として有力視されるのは電子記録債権と呼ぶ仕組みで、2008年施行の電子記録債権法で導入されました。
現金化や譲渡、担保としての利用などは従来の手形と同様に可能で、事務を効率化する利点は大きいとされます。
導入の広がりが課題となっており、紙の約束手形の廃止によって電子への移行が加速するかが焦点となるでしょう。
個人的には、手形・小切手の廃止には賛成です。
管理的な手間やコスト、盗難などのリスク、手形を発行しているからゆえ不渡りが生じることなどを考えると、廃止が望ましいでしょう。
廃止となると、でんさいにシフトすることになると思いますが、早く、でんさいが一般的になって欲しいと思います。
ただし、でんさいを資金化するときに相手先によっては資金化できないリスクは残ると思いますので、何らかの対策は必要になるかもしれませんね。
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