日本経済新聞によると、日本たばこ産業(JT)が海外子会社から受け取った約1,200億円(8億ドル)の配当を返還したことを巡り、税負担は生じないとする見解を国税当局が同社側に伝達していたことが、先日、関係者への取材で分かったようです。
課税対象になれば、JTから多額の資金が流出して財務が悪化する恐れがあり、当局の判断が注目されていました。
JTは2023年8月にオランダの子会社と孫会社を合併させ、存続会社となった旧孫会社から配当8億ドルを受け取りました。
しかしながら、2023年12月に同額を旧孫会社に返還したのです。
巨額の配当金返還は、極めて異例でした。
JTは当時、返還理由を「グループ内の現金保有量の最適化等」と開示していました。
2009年度の税制改正で、海外子会社からの配当収入は一定要件を満たせば95%が非課税(益金不算入)となります。
ただし、子会社株式の25%以上を6か月以上保有することが要件です。
ところが、JTは旧孫会社の株式を直接持っておらず、非課税要件を満たしていなかったのです。
2023年12月中旬に旧孫会社の取締役会で配当決議が取り消され、これを受けてJTが返還しました。
仮にこの配当が課税対象になれば、JTは300億円規模の税負担が生じる恐れがあったのです。
JTは、法人税などの取り扱いについて東京国税局に相談できる「J-CAP」制度を使って照会し、回答を得たようです。
国税当局への照会や回答について、日本経済新聞はJTに回答を求めましたが、「当局の見解については当社がお答えできる立場にない」としました。
一方、東京国税局は「個別の事案についてはコメントしない」と回答しました。
JTは、自社の株主に対し利益の75%を配当する方針を掲げており、高配当銘柄として個人投資家から人気が高くなっています。
JTは、2023年末に1,200億円を返還したことで単体の利益が減り、配当できる上限額が下がってしまいました。
この上限額を引き上げるため、2024年3月の株主総会で株主資本のうち配当可能額に含まれない「資本準備金」を、配当可能な「その他資本剰余金」に振り替える議案を諮り、可決されていました。
ミスに後から気付き、慌てて戻したのだと思いますが、税負担がないということになり良かったですね。
担当者は、しばらくの間、気が気でなかったでしょうね。
JTほどの会社となると、社内にも優秀な方がたくさんいると思いますし、大手税理士法人やOB税理士が付いていると思いますが、なぜ配当をする前に気付かなかったんでしょうか?
JTの1,200億円の配当返還に「税負担なし」と国税当局が伝達したことについて、あなたはどう思われましたか?