警察捜査初の司法取引で四国銀行から詐取疑いで税理士を逮捕! | 体脂肪率4.4%の公認会計士 國村 年のブログ

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日本経済新聞によると、兵庫県警が税理士らを逮捕した融資金詐取事件で、捜査に協力する見返りに刑事処分を免除・軽減する「司法取引」が適用されたことが、先日、関係者への取材で分かったようです。

司法取引の適用が明らかになったのは2018年の導入以降4例目です。

これまでの3件はいずれも東京地検特捜部による事件で、警察が捜査した事件では初めてとみられます。

警察が取り扱う事件は検察の独自捜査と比べ件数が多いそうです。

裁判所が捜査協力者の供述の信用性を慎重に判断する流れがあることなどを背景に司法取引の利用が増えないなか、制度の運用が広がる転換点となるかどうか注目されます。

対象となったのは四国銀行が被害者となった事件です。

兵庫県警は2023年11月、四国銀の支店担当者に虚偽の決算報告書を示して融資を申し込み、2020年10月〜2021年2月に4,000万円をだまし取ったとして自動車販売会社の元社長ら3人を詐欺容疑で逮捕しました。

さらに、2024年2月、同社が契約していた税理士法人の税理士ら2人も逮捕しまし
た。

自動車販売会社には多額の負債があったとされ、融資を受けた後の2021年8月に破産手続きが始まりました。

捜査で焦点となったのは、融資を申し込んだ時点で会社の財務状況を元社長や税理士がどう認識していたかでした。

関係者によると、司法取引は税理士法人職員との間で合意しました。

収集された証拠は厳しい財務状況を元社長や税理士らが認識した上で、虚偽の決算書類などが作成された一連の経緯の立証に生かされたとみられます。

税理士法人職員は不起訴処分となりました。

司法取引は2024年6月で導入から6年となりますが、利用が進んでいません。

裁判所が司法取引に応じた捜査協力者の供述の信用性を慎重に判断するケースが目立つといった要因があります。

警察事件での初適用を巡り、検察内部では「組織犯罪では活用のメリットが大きく一定の意義がある」と前向きに受け止める声が多いようです。

日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告の報酬過少記載事件では、元秘書室長が司法取引に合意しました。

特捜部は元室長の証言を軸に、同被告との共謀があったとして元代表取締役、グレッグ・ケリー被告を起訴しました。

元室長は20回以上出廷しました。

ケリー元役員に対する東京地裁判決は元室長の証言について「有利な扱いを受けたいとの思いから検察官の意向に沿って供述する危険性をはらむ」と厳しく評価しました。

客観証拠のあった一部を除く大半を無罪と結論づけました。

3例目も同様の流れは続きました。

アパレル会社元代表取締役=有罪が確定=から不正の指示を受けた元社員が司法取引に合意しました。

東京地裁判決は元社員の証言について「客観的な裏付けを欠き、信用性の判断で相当慎重な姿勢で臨む必要がある」と指摘しました。

元社員は事情聴取に出向いたことが明るみに出ないよう、架空の用事を口実に外出していたそうです。

こうした組織的な犯罪で、上位者の不正を打ち明けた証人の負担が重いことも適用が広がらない一因とされています。

司法取引は本来、客観的な証拠が少ない密室のやりとりが多い組織犯罪や経済犯罪の捜査における「武器」になるとみられていました。

適用が広がれば捜査機関と協力した訴追が可能になり、組織の自浄作用が働くという期待もあったのです。

海外では企業の不正防止に活用する動きがあります。

アメリカ司法省は2022年に公表した指針で、企業側が贈収賄やカルテルに関わった社員に自発的に金銭的処罰をしたり、捜査に必要な情報を提供する体制を整えたりすれば企業側の罪を問わない姿勢を示しました。

日本での活用拡大について「慎重に事例を積み重ねる必要がある」(検察幹部)という見方はなお強いようです。

制度を機能させるためには司法取引で得られた供述を客観証拠で裏付ける緻密な捜査と、協力に応じた証人をどう保護するかが課題になるでしょう。

▼司法取引

2010年に発覚した大阪地検特捜部の証拠改ざん事件を契機とする刑事司法制度改革の一環として、2018年6月施行の改正刑事訴訟法に盛り込まれました。

「協議・合意制度」とも呼ばれます。
容疑者や被告に対し共犯者らに対する捜査協力と引き換えに、起訴の見送りや取り消し、軽い罪への訴因変更、求刑を軽くするといった対応を取れます。

末端の実行役を免責して首謀者らを処罰する狙いで、経済犯罪や組織犯罪などでの活用を想定しています。
刑訴法では、検察官と本人、弁護人の合意が必要と定めています。

3者が署名して合意文書を作成します。

嘘の証言で他人を巻き込む恐れもあることから、虚偽の供述や偽造の証拠を提出した場合は5年以下の懲役に処せられます。

2018年に起訴された三菱日立パワーシステムズ(現三菱パワー)元幹部らの外国公務員贈賄事件で、初めて適用されました。

 

司法取引が税理士法人の職員との間で行われ、税理士法人の税理士が逮捕されているというのがすごく気になりました。

自ら粉飾に加担することはありませんが、会計事務所として、クライアントとどう接していくべきかを考えさせられる1件でした。

 

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