自治体向けの「ただ働き」が重荷でメガバンクが窓口での税金・公共料金納付を見直しへ!  | 体脂肪率4.4%の公認会計士 國村 年のブログ

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東京新聞によると、大手銀行が窓口での税金や公共料金の納付の取り扱いを、首都圏の市町村で相次ぎ縮小していることが、東京新聞の調べで分かったようです。

紙の納付書を窓口業務で扱う際の事務コストが主因です。

長引く日銀の超低金利政策で銀行の収益環境も悪化しており、そのしわ寄せが無料だった地域サービスに及んだ形です。

自治体には住民から問い合わせが寄せられており、担当者は「住民に不便をかけている」と困惑しているようです。


なお、税公金の収納業務は、金融機関が自治体の代わりに、個人住民税や介護保険料など、税金や公金の納付窓口を引き受けることです。

住民は納付書を銀行窓口に持参して税公金を支払います。

この他の納付方法については、口座振替(引き落とし)やコンビニ納付、地方税ポータルシステム(eLTAX)があり、具体的な納付方法や場所は各自治体のサイトで確認できます。

◆事務コストが重荷
東京新聞は、大手4行に書面でアンケートを実施しました。

関東1都6県での税公金の納付書の受け付けを一部終了する地方公共団体の数を尋ねたところ、最大手行の三菱UFJ銀行が4月から計55団体で収納業務を見直すと回答しました。

三井住友銀行も2024年内に計22団体で見直すとし、みずほ銀行も計47団体で取りやめる方針を明かしました。


背景には、納付書類を扱う事務コストが重荷になっている現状があります。

全国銀行協会が100行に実施した2021年の調査によると、窓口収納1件当たりのコストは平均で約400円です。

総務省の調査によると、地方税だけでも銀行などの窓口での納付件数は、推計で全体の約半数に当たる年約2億件に上ります。

納付書類の仕分けや自治体への送付など、人件費や搬送費がかかる一方、自治体からの手数料は0円との回答が6割を占め、「採算割れ」(大手銀行の関係者)の状況が続いてきました。

これまで銀行が「ただ働き」をしてきたのは、なぜなのでしょうか?

大和総研の鈴木文彦氏は「自治体の公金を扱うと信用力や知名度が上がり、貸し出しの基となる預金を集められるメリットがあった」と解説しています。

しかしながら、長引く低金利で状況は一変し、大手行グループは海外事業が好調で2023年4~12月期の決算は円安を追い風に過去最高益となっていますが、銀行は預金を集めても貸し出しで収益が得られず、窓口での税公金の取り扱いは重荷とみています。

首都圏の自治体関係者は「(大手行から)窓口収納1件当たり300円の手数料を要求された」と明かしています。

地方公共団体金融機構にも自治体から手数料に関する相談が寄せられたようです。


◆自治体の負担も難しく
税公金の窓口納付の縮小を受け、首都圏の自治体には住民から「他行でも納付窓口がなくなるのか」など不安の声が寄せられているといい、別の自治体の担当者は「ご不便をかけており、何件も問い合わせを受けている」と話しています。
代わって自治体が負担することも難しいようです。

野村資本市場研究所の江夏あかね氏は、地方の財政は高齢化による社会保障費の負担で厳しく「これまで無料か低額だった金融機関への手数料を、コストに見合う形に増やす余裕がない」とみています。

銀行業界は対応策としてオンライン納付を推進するが、江夏氏は「高齢者らデジタルになじみのない人が取り残されないように、銀行や自治体は地域で説明の機会を設けるなど、住民の電子納付をサポートしていくことが大切だ」と話しています。


◆<Q&A>デジタル化を推進するのはなぜ?
大手銀行は、税金や社会保険料などの収納事務について、納付書での窓口受け付けを縮小する一方、対応策としてオンライン納付を推進しています。

各行は納付手続きのデジタル化をなぜ急速に進めているのでしょうか?
Q これまで金融機関が納付書を無料で受け付けてきたのはなぜですか。
A 銀行OBによると、窓口での収納事務は住民の来店を促すことで、預金の開設につなげる狙いがあり、大手行にとって「地方で商売するのに強化した顧客サービス」(銀行OB)という位置づけでした。
しかし、コロナ禍に入って窓口の「密」回避が求められたことで、紙中心の収納事務の見直しやデジタル化が加速しました。

実際、横浜銀行は2023年10月から自治体や商工会など計158団体と、セミナー開催など電子納税を周知する「かながわ電子納税推進プロジェクト」を進めています。

担当者は「紙納付による事務コストの削減が社会的な課題になった」と話しています。


◆QRコードを読み込んでアプリで納付
Q 銀行業界が推進するオンライン納付とはどのようなものですか。
A 2023年4月から全国の自治体で始まったのはQRコードによる電子納付です。

一部の地方税でQRコード付きの納付書が導入されています。

納税者はスマートフォンでQRコードを読み取れば決済アプリで納付できます。

スマホのない人も銀行窓口でQRコードを読み込んでもらえば現金か口座引き落としで支払い可能です。

従来の納付書と異なりデータが自治体に伝送される仕組で、銀行は、書類を運ぶ必要がなくなるなど従来負担してきた事務コストを削減できます。

◆税以外の「公金」で多い未対応
Q 窓口でQRコードを読み込んで支払えるなら、利用者にとって従来とあまり変わらないのでは。
A そうとも限りません。全国銀行協会によると、QRコード納付の対象となる主な税金は、固定資産税、都市計画税、自動車税、軽自動車税の4種類です。

ほかの地方税も2024年度内に全てのQRコード納付が可能になる予定です。
しかし、介護保険料や後期高齢者医療保険料など税以外の「公金」は現時点でQRコード納付に対応していないものが多く、口座振替やコンビニなどで納付するか、収納事務を続ける地銀や信金を利用することになります。首都圏の自治体からは「メガバンクが公金の取り扱いを辞退した」「大手行が無料だった窓口納付で手数料を取るようになった」との声が上がっています。

 

税金・公共料金納付を銀行が無料でやっていたということをこの記事で初めて知って、驚きました。

自治体も銀行でコストが発生していることを認識し、手数料を支払うか、電子納税を進めないといけないですね。

銀行も人手不足でしょうから。

一方で、利用者も、コストがかかっているものに対しては手数料とかを支払わないといけないという認識を持つようにしないといけないでしょうね。

個人的には、サービス等に見合った報酬等は支払わないといけないと普段から意識していますし、そのような意識がない方からの仕事は受けないようにしていますが、その観点は非常に重要だなぁと改めて認識した記事でした。

 

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