「後継者不在企業」の動向はどうなっているのか? | 体脂肪率4.4%の公認会計士 國村 年のブログ

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 地域の経済や雇用を支える中小企業ですが、近年は後継者が見つからないことで、事業が黒字でも廃業を選択する企業は多いと見られています。
 経済産業省が201710月に公表した試算では、今後10年間で70歳を超える全国の中小企業経営者は約245万人と推計しています。
 経済産業省は、2025年頃までに約650万人の雇用と約22兆円分のGDP(国内総生産)が失われる可能性を指摘しています。
 こうした中、小企業の休廃業が相次げば地域経済の衰退や雇用喪失を招きかねないとして、国や県、地域金融機関などが中心となって事業承継への支援を強化するなど、日本企業の後継者問題は官民ともに喫緊の課題として捉えられています。
 帝国データバンクは、201810月時点の企業概要データベース「COSMOS2」(約147万社収録)及び信用調査報告書ファイル(約180万社収録)をもとに、2016年以降の事業承継の実態について分析可能な約276千社(全国・全業種)を対象に、後継者の決定状況など後継者問題と事業承継動向について調査を行いました。
 なお、同様の調査は201711月以来5回目です。


後継者不在状況・概要●
<年代別後継者不在率>
 2016年以降(201610月~201810月間)の詳細な実態が判明した約276千社(全国・全業種)の後継者不在状況は、全体の約66.4%に当たる約18万社で後継者が「不在」となりました。
 社長年代別に見た後継者不在率では、最も高いのは「30代未満」の94.1%となり、経営者が高齢になるにつれ、後継者不在率は減少傾向となっています。
 過去3年間の傾向を見ると、2016年に全年代で後継者不在率は悪化していましたが、2017年以降「50代」以上で後継者不在率は改善し、2018年における「60代」~「80代以上」の後継者不在率は調査開始以降最低となりました。
 一方、「30代」と「40代」では、2018年における後継者不在率は調査開始以降最高となるなど、事業承継に対する意識は年代別で傾向に差も見られます。
 現社長における先代経営者との関係別(就任経緯別)に見た後継者不在状況では、全年齢で一貫して「同族承継」で就任した社長の後継者不在率が、「創業者」の後継者不在率を下回りました。
 「同族承継」では、親族間で確立した世代交代制度などが、後継候補の確保に寄与している可能性があります。
 他方、「創業者」では事業承継が未経験の企業も多く、事業を承継させるために「何に取り組めばいいのかがわからない」まま、先延ばししている中小企業も少なくないと見られます。
 一方、「内部昇格」で就任した社長の後継者不在率は、67歳以降全国平均を上回り、68歳以降で「創業者」を上回りました。
 内部昇格や外部招聘などにおいて、若い世代が事業承継を受けた企業では次代の後継者選定に向けた十分な時間が取れているケースが多いと見られます。
 一方、比較的高齢で事業を引き継いだ経営者などでは、後継候補の選定や育成といった事業承継の準備期間が短くなりやすく、後継者候補の選定や事業承継が難航する要因となっています。


<地域・都道府県別>
 地域別の後継者不在状況を見ると、9地域中4地域で前年を下回りました。
 このうち、「北海道」が後継者不在率73.5%となり、過去調査同様に全国で最も高かったものの、2017年からは0.5ポイント低下しました。
 また、「中国」(70.4%)は3年連続で後継者不在率が前年から低下しました。
 一方、「東北」(64.8%)や「北陸」(58.2%)など5地域では前年を上回り、なかでも「北陸」は2017年から1.1 ポイント上昇しました。
 また、5地域中「東北」と「近畿」を除く3地域では、いずれも2011年の調査開始以降で後継者不在率が最高となりました。
 都道府県別では、「沖縄県」が全国平均(66.4%)を大幅に上回る83.5%で全国トップとなり、全国で唯一8割台を超えました。
 沖縄県では、ベンチャー企業をはじめとした創業年数が比較的若い企業や、沖縄県の本土復帰に伴い創業した企業なども多く、他地域に比べ事業承継を経験した機会が比較的少ないことも背景にあると考えられます。
 以下、「山口県」(75.0%)、「神奈川県」(73.8%)、「北海道」(73.5%)などが続いています。
 他方、「佐賀県」では全国平均を大幅に下回る43.2%で全国最低となりました。


<業種・企業規模別>
 業種別の後継者不在率では「その他」を除く7業種中4業種で全国平均を上回り、なかでも「建設業」(71.4%)は2017年から0.2 ポイント上昇しました。
 後継者不在率が最も高いのは「サービス業」(71.6%)となりましたが、2017年と比較して0.2ポイント低下し、後継者問題への対応の改善が見られました。
 2018年における後継者不在率を従業員数別に見ると、従業員数「5人以下」の企業は全体の75.0%が後継者不在となりました。
 売上高規模別では「5,000万円未満」で81.4%、資本金別では個人事業主を含む「1,000万円未満」で76.9%の企業がそれぞれ後継者不在となっており、中・小規模企業を中心に後継者の選定を終えていない企業が多くなっています。
 一方、中堅~大規模企業になるほど後継者の選定が進んでいる傾向が見られます。


●事業承継動向●
<就任経緯別(事業承継前)>
 約276千社(全国・全業種)のうち、詳細な後継候補が判明している約93千社の後継者候補の属性を見ると、後継候補として全国で最も多いのは「子供」の39.7%となり、次いで「非同族」の33.0%となりました。
 年代別に見ると、60代以降の社長では後継候補として「子供」を選定するケースが多い一方、50代以下の社長では「親族」や「非同族」を後継候補としている企業が多く、50代では約4割が「非同族」を後継候補としていました。
 この結果、全国平均では「非同族」の割合は2017年と比較して1.5ポイント上昇しました。
 承継を受けた社長における先代経営者との関係別(就任経緯別)に、後継者候補の属性をみると、「子供」を後継者候補とする企業が多いのは「創業者」(60.3%)、「同族承継」(48.5%)となり、いずれも「子供」の次は「親族」「配偶者」の順に後継者候補とする企業が多くなっています。
 しかしながら、2017年と比較すると、ほとんどで後継者候補に、従業員など社内外の第三者である「非同族」を挙げる企業の割合が増加しました。
 近年は、同族外への承継に際しても利用可能な「事業承継税制」における対象制限の緩和など、国や自治体による政策的な事業承継の支援のほか、社内外の第三者へ事業譲渡を行う事に対する抵抗感が、従前より軟化しつつあることも影響していると見られます。


<就任経緯別(事業承継後)>
 約276千社(全国・全業種)の代表就任経緯を見ると、全体の40.3%に当たる約11万社の企業が「同族承継」となり、計算上国内企業の約2.5社に1社が同族企業となりました。
 次いで「創業者」(34.7%)、「内部昇格」(14.7%)となり、社外の第三者による事業の継承など「外部招聘」は3.2%にとどまりました。

 2016年以降に事業承継が判明した企業約35千社の社長について、先代経営者との関係(就任経緯別)を見ると、2018年は「同族承継」で引き継いだ割合が最も高く36.0%となりました。
 しかしながら、2016年(42.4%)と比較すると6.4ポイント低下し、2017年からも2.8ポイント低下しました。
 一方、「同族承継」の次に多い「内部昇格」による事業継承は32.0%となり、2016年(30.8%)から1.2ポイント上昇しました。
 社外の第三者が就任した「外部招聘」は、2018年は8.2%となり、2016年(7.7%)から0.5ポイント上昇しましたが、2017年からは同水準で推移しました。
 この結果、2018年に判明した事業承継は、子供や配偶者、親族間で事業を引き継ぐ「同族承継」より、親族以外の従業員などが事業を承継した「内部昇格」や「その他(買収・出向・分社化等)」などの割合が上昇し、全体の半数超で親族以外出身の社長が事業承継を受けていました。
 こうしたケースでは、幹部人材の登用による50代や60代の社長で多くみられ、豊富な業界経験や経営経験を背景に代表職へ就任した企業が多くなっています。
 このほか、2018年は「創業者」への事業承継が5.3%を占め、2016年から1.4ポイント上昇しました。
 創業者による事業承継は、特に70代や80代など高齢社長による事業承継が多く、一度社長職から代表権のない会長職などに退任したものの、後継候補の育成に伴うものや、経営幹部人材の不足などで、再度代表職へ復帰したケースが見られました。

 今回の調査では、2018年の後継者不在率は全国・全業種で66.4%となり、2017年からほぼ横ばいで推移しました。
 ㈱日本政策金融公庫が行った調査では、中規模企業の9割以上、小規模企業では8割以上の企業が、後継者の育成には最低でも3年以上かかると回答しています。
 後継候補の育成は中長期間に渡ることから、事業承継には後継者の育成を考慮したうえでの計画的な準備が重要であることを指摘しています。
 しかしながら、今回の調査では社長の平均年齢である50代で約7割、社長引退の平均年齢である60代でも約5割の企業で後継者候補が未定となるなど、事業承継時期に差し掛かる年代の後継者不在率は依然高位に留まっています。
 他方、事業承継を行いたくとも後継者候補がいない企業では、転廃業や上場、M&Aなど事業承継のための選択肢が限られやすくなります。
 また、技術力など有用な経営資源を有していても債務負担が重い企業では、後継者や事業売却先、金融機関との調整が難航するケースもあり、承継に向けた心理的ハードルの高さから事業承継を断念してしまう可能性もあると見られます。
 こうしたなか、今年に入って後継者不在のため事業継続の見込みが立たないことで倒産した企業は316件発生し(201810月時点)、2018年通年では2015年以来3年ぶりに増加する可能性が高くなりました。
 代表者の逝去や体調不良で事業継続がままならなかった企業や、後継社長への引継ぎや育成が上手くいかず、経営が立ち行かなくなったことで事業清算を選択する企業が多くなっています。
 近年は「非同族」を後継候補とする企業や、経営経験や現場経験が豊富な「内部昇格」「外部招聘」により事業承継を行った企業の割合は年々上昇傾向にあり、親族だけでなく「社内外の第三者」による親族外承継も含めた事業継承を検討・実施する動きが徐々に広がりつつあります。
 そのため、国や地方自治体では「プッシュ型事業承継支援高度化事業」や「よろず支援拠点」などの公的支援を活用しました、
 中小企業経営者への事業承継に向けた積極的な働きかけのほか、より利便性の高い事業承継の選択肢、制度拡充への取り組みが引き続き求められます。
 また、地域金融機関では地域の事業者情報等を有する強みを生かし、「事業性評価」の活用による中小企業の事業承継フォローなど、債務面以外に着目した多面的なサポートが期待されるでしょう。

 国も『事業承継』に力を入れており、その例がいわゆる『新事業承継税制』だと思いますが、それもあってか、最近は経営者がかなり『事業承継』に興味を持つようになってきていると実感しています。
 ただし、『事業承継』の必要性を認識されていない経営者や『事業承継』の必要性を認識しているもののどうしていいのか分からない経営者も、まだまだたくさんいらっしゃると思いますので、その辺りの顕在化やニーズの把握に少しでも貢献できればいいなぁと思っています。

 2018年全国「後継者不在企業」動向調査について、どう思われましたか?