「不適切な会計・経理を開示した上場企業」調査 | 体脂肪率4.4%の公認会計士 國村 年のブログ

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 上場企業で2015年度に「不適切な会計・経理」を開示した企業が、29日までに43件に達し、20074月の調査開始以来、年度ベース(4月から3月)での最多記録を更新しました。
 開示企業は新興市場が減少した半面、東証1部、2部上場企業が28件(構成比65.1%)に増えました。
 また、「不適切な会計・経理」の内容は「経理処理の間違い」など単純なミス以外に、「着服横領」、「業績や営業ノルマ達成を動機とする架空売上」、「循環取引」など、コンプライアンス意識の欠落や業績低迷を糊塗した要因も多くなっています。
 産業別では、前年度に続き製造業の増加が顕著で、国外に製造拠点や営業拠点を多く展開するメーカーを中心に不適切会計が多く見られました。

<年度別推移>
 2007年度以降の「不適切な会計・経理」を開示した企業数は、2013年度から漸増傾向をたどっています。
 2015年度は201629日までに43件に達し、年度末まで約2か月を残し調査開始以来、最多記録を更新しました。

<内容別>
 不適切な会計の内容(動機)は、利益水増しや費用支払いの先送り、代理店への押込み販売や損失隠しなど、業績や営業ノルマ達成のための「粉飾」が18件(構成比41.9%)で最多でした。
 次いで、経理ミスなどの「誤り」が12件(同27.9%)、会社資金の「着服」が10件(同23.3%)と続きます。
 子会社が当事者のケースでは、親会社向けに業績や予算達成を偽装した不適切会計が多く見られました。
 また、役員らが関与した「役員への不正な利益供与」や、「元従業員による不正行為による会社資金の着服横領」など、コンプライアンス意識の欠落した事例など不適切会計は多様化しています。

<発生当事者別>
 発生当事者別は、「子会社・関係会社」が20件(構成比46.5%)で最多でした。
 子会社幹部による売上原価過小計上や、在庫操作さらに支払い費用の先送りなど、いわゆる粉飾目的の不正経理のほか、子会社従業員による架空取引を装った着服横領もありました。
 目が行き届きにくい子会社・関係会社でのコンプライアンスが徹底していないケースが目立ちます。
 「会社」は、会計士から経理処理のミスを指摘されたものが大半を占め、また「従業員」では、着服横領のほか、代理店に対する押込み販売など、営業成績のプレッシャーに圧されて架空取引に手を染めるなど、過度の成績至上主義が動機となったケースも多くなっています。

<産業別>
 産業別の最多は製造業の18件(構成比41.8%)でした。
 インフラや半導体事業で利益の水増しを行っていた
東芝のほか、代理店に対する押込み販売による売上高の過大計上を行った曙ブレーキ工業など、自社の利益を優先するための不正経理が行われていました。

<市場別推移>
 2013年度までは業歴が浅く財務基盤が比較的弱い東証マザーズ、ジャスダックなどの新興市場が目立ちましたが、2015年度は国内外に子会社や関連会社を多く抱える東証1部・2部の大手企業に不適切会計が集中しました。
 大手企業の子会社で従業員による着服横領や、業績達成のため不正会計を行うケースが目立ちました。

 2015年度は、
東芝の不適切会計が大きな話題となりました。
 企業がコンプライアンスを放棄し、経営者、従業員自身の慢心と保身により多くの投資家が損失を被りました。
 多額の課徴金の支払いに加え、歴代経営陣の刑事告発も検討されるなど、社会的な信用失墜だけでなく不適切会計で支払う代償が大きいことを改めて示しました。
 金融庁と東京証券取引所は20153月5日に、上場企業に独立性が高い社外取締役2人以上を選ぶよう促すなど企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)を決定しました。
 株主の権利・平等性の確保のほか、適切な情報開示と透明性の確保、内部通報制度の整備など5項目からなり、上場企業が守るべき行動規範を網羅したものです。
 経済のグローバル化によりマーケットが広がった反面、不祥事は企業存亡の危機に直面することもあります。
 企業が社会の信頼を得るためにも、経営者はコンプライアンスを徹底する高潔な決意が求められます。
 また、グループ会社を含めた従業員に対して明確な経営ビジョンを示し、その実現のためにもコンプライアンスを浸透させる重い責任もあります。
 2015年度は投資家への影響度が大きい東証1部、2部上場企業の不適切会計・経理の開示が28社と全体の65.1%を占めています。
 規模の大小に関係なく、コンプライアンスの根幹を見直す時期が来ているようですね。
 個人的には、粉飾の場合には、金額の基準等の問題はありますが、原則として上場廃止にしたり、粉飾に加担した経営者に厳罰を与えるなどして、粉飾を防ぐ時代になっているのではないかと思います。
 また、経営者が交代した際には、経営者に対して会計の重要性を認識してもらう機会が必要なのではないかと思っています。

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