夏時計の結論 

昨年(2020年)は年初からずっと夏(もしくは雨天)にする時計を考えていました。

そもそも私は可能な限り革ベルトのドレスウォッチを着けていたい人間なので、ブレスレットの時計は余り好みでもありません。

しかし日本の夏には必須のアイテム。元々10気圧防水のブレスレット時計であるケープランドは所有していますし、これで十分といえばそうなんですが、重さ150gもあると結構疲れます。
そこで10気圧以上の防水性を持ちつつ、小径薄型の時計が一つ欲しいなと思って探し回っていました。

当初候補として上がったのは↓このあたり。
ロレアート38mm
アルパイン・イーグル36mm
オーバーシーズ37mm
オーバーシーズ35mm(初代)
ロイヤルオーク37mm(15450st)も候補かと思いきやあれって5気圧防水なんですね。

他にもロレックスデイトジャストオメガコンステレーションカルティエサントスなど色々あるのですが、いずれも自分の中では決め手に欠けていました。

基本的に私は一目惚れで買い物をするタイプなので、これだ!って思わないものは買わないようにしています。でないとお金がいくらあっても足りません。

で、散々悩んだ挙句に行き着いたのがこれという訳です。

Aquanaut Ref 5066/1A / PATEK PHILIPPE 

Ref:5066/1A
ケース径:34.0mm (対角35.6mm)
ケース厚:8.7mm
重量:96g
ケース素材:ステンレス・スティール
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:サファイア・クリスタル
ベルト素材:ステンレス・スティール
バックル:バタフライ式Dバックル
防水性:12気圧(120m)

まさか自分がパテック買うとは夢にも思って無かったんですが、ホントに数ヶ月間いくら考えても最後はこの時計に思いが至ったんですよね。

デザイン、サイズ、装着感、機械、実用性、どれを取っても文句なしです。とはいえ値段が高すぎて全く現実的ではありませんでした。

しかし、いったん別の時計を買っても絶対最終的にこのアクアノートに行き着く気がしたので、だったらウダウダ遠回りするのは時間もお金も無駄だな、と思って意を決した訳です。



これを買ったのは2020年8月ですが、まだまだ世間はコロナショックの余韻が残り、腕時計市場もショック以前と比べると価格が下がっている状態でした。

加えて小売店も様々な割引キャンペーンを展開していて、それらを合わせるとショック前より結構安く買えたと思います。

それでも定価からするととんでも無く割高なんですが、それでも欲しいと思えたので価格には完全に納得して買いました。

そもそもディスコンなので、どうしたって定価では買えませんしね。

結果、めちゃくちゃ満足しています。


まず外装ですが、柔らかいオクタゴナルケースが唯一無二のシルエットを持っており、サテン仕上げのベゼルも筋目が浅過ぎず深過ぎずで絶妙です。

フェイスに目を移すと、ホワイト・ゴールド製のアラビアン・インデックスにレクタンギュラーとバー・インデックスを合わせて情報量は多めでスポーティな印象。

ダイアルは筋彫りの入ったマット仕上げの黒文字盤で、なんとも表現が難しいのですが質感はとても良いです。

針のポリッシュもめちゃくちゃ綺麗で、とにかく全体的に仕上げのレベルの高さを感じます。これは近くで見てみないと分からないんですが、本当に粗がない仕上がりなのです。

そして一風変わったブレスレットもユニーク。私は旧アクアノートのこのブレスがすごく好きです。別に着け心地が良いわけではないんですが、この遊びのあるデザインですよ。

きっちり工作精度を詰めて完成度の高いブレスを作る最近のウォッチメイキングとは対照的で、正直何かよく分からんユルい雰囲気のブレスレットが良いのです。


型番:Cal 330 SC
ベース:-
巻上方式:自動巻
直径:27.0mm
厚さ:3.50mm
振動:21,600vph
石数:29石
機能:センター3針デイト
精度:ジュネーヴシール (日差-4/+6秒)
PR:48時間

搭載するのはジュネーヴシール認定(パテック・フィリップシールは2009年から)のCal 330SC

ミディアムサイズ向けの同キャリバーは6振動/秒とロービートです。現在はスポーツウォッチには外乱に強い高振動ムーブメントというのが定着していますが、5066が登場した1990年代はまだそれが一般的ではなかったのでしょうか。

パワーリザーブも48時間なので、70時間前後が主流になりつつある現行ムーブメントと比べると、基本スペックは見劣りします。

しかし薄型で精度にも優れ、かつアクアノートというデイリーユース用の時計にも収まる堅牢性の高さも備えた機械です。

何よりジャイロマックス®︎テンプを備え、ジュネーヴシール認定を受けた高精度の美しいムーブメントをシースルーバックから鑑賞する事が出来るというのは最高です。



もう一つ、アクアノートを使っていて感動するのは針合わせの感触です。

よく腕時計雑誌などで「高級機らしいリューズの操作感」みたいな表現が出てきますよね。正直それ何やねん?と私は長らく思っていたんです。

確かにリューズの感触は時計によって異なりますが、手持ちの時計を比べてもどれが特別良いというのは良く分かりませんでした。

しかしこの時計だけは明らかに感触が違うのです。簡単にまとめると
①リューズを回す感覚が滑らか
②リューズ操作と針の連動に遊びがない
③リューズの回転に対して針の動きが小さい
です。

①はそのまんまですが、回した感じがしっとりしています。時計によってはチリチリとかカリカリという感覚があるものもあると思いますが、5066はとにかくしっとり滑らかです。

②に関しては、リューズ操作と針の動きの一体感が半端ありません。回し始めの遊びもほとんど感じず、めちゃくちゃ気持ちいいです。

③が一番感覚的には大きな部分です。手持ちの他の時計はリューズを一回転すると分針はかなりビュンっと動くのですが、この時計はそれが少なく、そのぶん針合わせが簡単なのです。



更にデイトも瞬転式なので日送りもカシャっと変わって、数字が窓からズレてるのをリューズで微調整するみたいな作業も一切不要です。

中々文章だけでは伝わらないんですが、私の手持ちでいえばブランパンなんかと比べても全然違います。

この感覚はかなりクセになりそうです。少なくともこれから時計を買う際はリューズの操作感は絶対確認したいと思うほどです。

数ヶ月間使ってみた感想として、(少なくとも今は)これで夏時計問題は完全に決着したと思えるほど気に入っています。

加えて財布が完全にすっからかんになったので、全くもって次の時計どうしよう?みたいなマインドにもなりません。

お陰で新作(話題のスピマスとか)に関しても悟りを開いたような薄目で見ている自分がいます笑

いつまで持つかは知りませんが、兎に角素晴らしい時計に出会えた事に感謝しています。