ムーンフェイズに魅せられて


恒例のマイウォッチ・シリーズですが、第三弾はようやく涼しくなって出番が増えてきたドレス系です。

Villeret Quantieme Complet / BLANCPAIN 

Ref:6654A 1127 55B
ケース径:40.0mm
ケース厚:10.7mm
重量:-
ケース素材:ステンレス・スティール
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:サファイア・クリスタル
ベルト素材:アリゲーター・レザー
バックル:バタフライ式Dバックル
防水性:3気圧(30m)

私が初めて買った機械式時計がボーム&メルシエケープランドだという話は以前書いた(#62)通りですが、2本目に買ったのがこのヴィルレ・コンプリートカレンダーです。

きっかけは、仕事で人前でプレゼンテーションする機会が増えてきて、腕時計の必要性を感じたからです。プレゼン中にスマホを操作する訳にもいきませんしね。

長らく機械式時計から離れていましたが、スマートウォッチやクオーツ時計を買おうとは微塵も思わず、機械式時計を探すことにしました。

この時計を買った当時は今より全然知識もなかったので、はじめは何となくジャガールクルト(JLC)あたりを買おうと思いつつ、IWCゼニスジラールペルゴあたりの名門どころを中心に物色していました。

当初は漠然と、スーツに合う革ベルトの時計を探していたのですが、いくつか見ているうちにムーンフェイズの時計が目に留まり、その美しいフェイスに引き込まれました。

機能的には全く不要なのですが、デザイン上のインパクトは大きく、知性と遊び心が融合したような洒落っ気のあるフェイスに魅力を感じたのです。

最初に気になったのはJLCマスター・ウルトラスリム・ムーンだったと思います。

<Master Ultrathin Moon / JAEGER-LECOULTRE>

夜空を表現する濃紺のインダイアルが文字盤上でひときわ存在感を見せるのですが、派手さはなく上品なアクセントになる点がムーンフェイズの良い所です。

あと個人的に青や紺が好きなので、それが挿し色になる点も大きかったです。

そうこうしているうちにふとケープランドを探していた時に気になっていたブランドを思い出しました。それがブランパンです。

そんな訳でムーンフェイズ付きの時計にしようと思って次に出会ったのがブランパンのヴィルレ・コンプリートカレンダーでした。

これは本当に一目惚れでした。

何よりダイアルの質感が飛び抜けていました。JLCと比べても明らかに仕上げのレベルが高かったのです(元々JLCはダイアル仕上げにそれほど定評ないですが)。

それこそ初めはロレックスオメガも含めて(この辺を買うつもりはなかったですけど)一ヶ月近く色んな時計を見ていたのですが、これほどダイアルの仕上げが見事な時計は見た事がありませんでした。

ガワが良いとされるIWCなんかと比較してもブランパンの仕上げの方がかなり上だと思います。

<光の具合で、表面が輝いて見える文字盤仕上げ>

アプライド・インデックスの磨き、中空リーフハンズの仕上げ、日付窓や月齢窓のエッジ処理、サーペント型の青焼デイトポインター、寓話絵本の挿絵のような独特の表情のムーンフェイズ等々、その美しさには非の打ち所がない様に感じました。

特に針の美しさ何度見ても惚れ惚れします。

革ベルトも濃紺のアリゲーター・ストラップを選択可能だった事もあり、そのセットアップで試着させてもらった時点で心は決まっていました。

この時計を買ってから、時計沼にハマり、以来かなりの数の時計を見てきましが、未だにステンレス製ドレスウォッチとしては、私の中でこのヴィルレ・コンプリートカレンダーを上回る時計を見たことはありません。

ステップベゼルにストレート型のラグを合わせたシルエットは優雅ですし、月齢に応じて表情を変えるムーンフェイズも日々私の目を楽しませてくれます。

濃紺のベルトは同色系のスーツにマッチするのは言うまでもありませんが、ジャケットやニットにも合わせられるので、たまに休みの日にも使います。

ただ、後に色々見た結果ドレスウォッチは小径が良いなと思う様になったので、40mm径のヴィルレはちょっと大きい気がしています。が、月、曜日、日付、月齢と多くの表示要素があるので、間延びしている感じはありません。

それにコンプリートカレンダーというコンプリケーション持ちでありながら厚さは10.7mmに収まっているので、シャツの袖口には全く問題なく収まります。

また、外装の上質さのみならず、ムーブメントも一級品が収まっているというのも大きな魅力の一つです。


型番:Cal 6654
ベース:-
巻上方式:自動巻
直径:32.0mm
厚さ:5.48mm
振動:28,800vph
石数:28石
機能:センター3針デイデイト、マンス、ムーンフェイズ
精度:-
PR:72時間

搭載するのはブランパン・マニファクチュール(旧フレデリック・ピゲ)社製のCal 6654です。

ツインバレルのコンプリケーションなので、サイズは大きく、32 x 5.5mmに達します。この機械の割にはケースサイズはよく抑えられていると言えるでしょう。

ブリッジのパーティングは美しく、面取りも丁寧に施されています。青ネジではないですが、非常に美しい機械です。金無垢のフルローターがつくので、全面を鑑賞することができないのが残念です。

シリコン素材のヘアスプリングにフリースプラングテンプ72時間パワーリザーブと性能面でも文句なしのムーブメントです。

ただいくら三日間のパワーリザーブがあると言っても私の使い方だと週1~2回の着用がせいぜいなので、基本的に使うときには止まっています。

コンプリートカレンダーが止まるとかなり面倒です。日付、曜日、月、月齢を合わせないといけませんからね。

通常コンプリートカレンダーの調整は調整用のピンを使って行うのですが、このヴィルレにはそんな物必要ありません。

アンダーラグコレクターというパーツがラグの下にあって、それを押し込む事でカレンダーの調整が出来るのです。したがってとりあえず何もせずに家を出ても、職場で一息ついてから調整出来ます。

調整ピンを持ち歩く人はあまりいないでしょうから、実用面を考えるとこのコレクターの存在は大きいです。

<ラグの付け根に見えるのがコレクター>

ヴィルレ・コレクションの中で最も人気があるのがこのコンプリートカレンダーだというのは後々知りました。

まだ同じ時計持ってる人を実際には見たことないのですが、どんな人が持ってるのかちょっと気になります。

この時計購入後に熱にあてられたように、ポンポンと機械式時計を買い足していったのですが、それでも未だにこの時計はかなりお気に入りです。

手持ちでは一番の複雑機構ですし、デザインも気に入っています。それに初々しい気持ちで色々探した末に買ったため思い入れも強いので、自分の中ではトップティアの一本ですね。

あと、暇さえあれば時計屋に通っているMinority’s Choice の経験上、着けてて最も店員さんとの話が盛り上がる時計はコレです。

一般的にはほぼ無名ですが、さすがに時計屋さんは老若男女問わずブランパンは知っているので、外装の話や機械の話で盛り上がるのです。

まあ、褒め殺しで気分良くさせといて何か買わせてやろうという魂胆もあるのでしょうけど、他の時計してる時とは明らかに褒められ方が違うんですよ。おべっかだと分かっていても嬉しいものです笑

<良い表情のお月様>

私の理想のラインナップにおいて、ステンレス製ドレスウォッチの枠はこれで埋まりました。

ベルトが紺色なので若干コーディネートに制限が掛かるため使用頻度はそれ程多くないですが、着けると気分がアガります。

ダイアルは時間が経つのを忘れていつまでも見ていられる美しさです。

SSケースですが、3気圧防水なので、雨の日はあまり着けません(普通の雨ぐらい大丈夫なんでしょうけど)。時計が増えるに連れて使用頻度は落ちていくのですが、その分長く使えるから良いかなと思ってます。

思い入れも強いしお気に入りなので、末永く愛用していきたいと思います。