2024年1月21日に開催された今回の研究集会。私は仕事の都合で東京までは行けなかったので、オンデマンドで参加しました。
今回は「新時代のアセスメント」というテーマだったので、WISC最新版の「WISC-Ⅴ」の改訂内容の紹介や、基礎学力の習熟度も測定できる「KABC-Ⅱ」、適応行動の評価ができる「Vineland-Ⅱ」についての講演がありました。
私は普段検査者の立場になることはなく、もっぱら結果からお子さんの状態を読み取る側なのですが、検査を開発している方の考えなどもお聞きでき、検査バッテリーの組み合わせからわかることがらなど再認識するよい機会だったように思います。
私は、子どもさんのなかのデコボコ(ディスクレパンシー)などは検査結果から支援の参考にしていますが、検査では子どもの一部、言うなれば、便宜上ある時点で切り取ったその子のひとつの断面しかわからない...と思っていて、あまり検査結果に頼らないようにしています。検査結果より、実際に子どもたちとかかわるなかで子どもを見とることが大事だと考えているので、今回の検査によるアセスメントについては、そこまで関心が深くなかったのですが、そんななかで、東京学芸大学教授の藤野先生の指定討論で話されたことが今回とても印象に残ったので、以下にまとめてみます。
🟡ウェルビーイング(Well Being)
これからのテーマは「ウェルビーイング(Well Being)」である、ということ。
「ウェルビーイング(Well Being)」は幸福や福祉、健康などと訳されています。世界保健機関憲章では、「健康とは、単に疾病がない状態ということではなく、肉体的、精神的、そして社会的に、完全に満たされた状態にある」とするなかで、「ウェルビーイング」ということばを使用しています。このことばが初めて登場したのは1946年の世界保健機関(WHO)設立時だそうです。ずいぶん前からあることばですが、これからの時代にぴったりな気がします。
Well・・・よい
Being・・・状態
...なので、心も体も社会的にも良好な状態とされています。私はいつも、利用者さんたちには「自分らしく社会のなかで幸せに生きていくことが一番大事」とお伝えしています。「できる・できない」より、ずっと大事にしたいと考えています。
🟡「選好性」
ASDの人たちのこだわりは、「こだわり」というより「選好性」である。
「選好性」は本田秀夫先生がご著書の『発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』のなかで、以下のように表現されています。
『発達の特性を「〜が苦手」という形で、なんらかの機能の欠損として捉えるのではなく、「〜よりも〜を優先する」という「選好性(preference)の偏り」として捉えてみるほうが、自然なのではないかとも思えます。』
そして、「自分らしく生きる」ためには、「選好性」=「優先したいこと」=「好きなこと」に着目した支援を軸にしていくのがよいのではないか、と改めて思いました。
できないことを無理してできるようにするより、好きなことやご本人の強み(ストレングス)を生かしていく支援(ストレングスベースドアプローチ)が、当事者さんにも受け入れやすく、ともに意欲的に進んでいける気がします。
当事者さんの好きなこと(内発的動機づけ)は、何かごほうびをもらうこと(外発的動機づけ)よりもご本人を動かす力があると感じます。
それは、
・それ自体が楽しいから
・それ自体をやりたいから
・そこに行きたいから
...という内発的動機づけによるものとも言えると思います。
たとえば「何かをくれるから」というような“外からのごほうび“だけでは、その報酬がよほど魅力的でない限り、ご本人は動きません。
やる気は自分の中から出てくる...のかなと思います。
🟡「特別な興味」から一般化へ
興味関心のベクトルが、発達特性のある人たちは定型発達の人と逆なのだ、というお話もありました。
🔹一般的には...
①広く(浅く?)物事を知る
↓
②専門的な領域に興味をもつ
🔹発達特性のある人は...
①興味関心のある領域を理解する
↓
②特別な興味関心のあることを通して、周囲の世界を理解していく
知識として蓄積できる 就労につながる...など
...なので、興味関心のあることを大切にすることによって、世界が広がる...ということです。これは支援の現場にいるとすごく実感することです。
好きなことがあるから、それをやるために必要なこと(今まで関心がなくてやっていなかった生活面のことなど)ができるようになり、自分の周りの身近な世界のことにも目が向くようになる...といった感じです。
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