なぜこのオペラをigaさまにリクエストしたかというと、
職場でMIYAさんが職場でネットで聴いていたアリアがあって、
そのなかにとびきり美しい旋律のものが、このオペラのなかのアリアだったから。
『サン・サーンスがオペラ書いてたんだ。』
サン・サーンスと言えば、《動物の謝肉祭》くらいしか知らない。
しかも、その作品も、これといって魅力を感じないものだから、
私のなかで、サン・サーンスという作曲家は、記憶に登録されない作曲家だった。
でも、MIYAさんが流していたアリアで、しかもそのオペラが、旧約聖書からの題材だったから
これは是非とも観てみたかった。
聖書は旧約も新約も知ってる。
ぞくぞくするような物語が、旧約聖書のなかにはちりばめられてる。
異教の女性と接触することは、当時では禁じられているものなのに、
聖者でさえ、過ちを犯す。
DVDが始まり、最後まで一気に観た。
正確には二度、繰り返し観た。
サンフランシスコ・オペラ劇場
サンフランシスコ・オペラ管弦楽団・合唱団
指揮はジュリアス・ルーデル
演出はニコラス・ジョエル
サムソン役は、「ツゥーランドット」以来、ファンになっていた大御所、プラシド・ドミンゴ。
おぉ!若かりし頃のドミンゴちゃん☆ (I love You~!)
デリラ役は、シャーリー・ヴァーレットという実力派だった。(I dislike You)
物語は、イスラエルの選ばれた民サムソンが神ヤハウェ(エホヴァ)から力を与えられ、
弾圧するペリシテ人との戦いに勝っていく。
神から賜った力の秘密はサムソンの長い髪。
サムソンは、イスラエルの英雄となっていくが、ペリシテ人のデリラという女性に魅了される。
デリラは、サムソンの力の謎を解明すべく、サムソンを操り、偽りの愛の言葉を囁く。
「私を愛しているなら、貴方の力の秘密を教えて。」
「それは出来ない。私はヤハウェから選ばれた男。」
「ヤハウェが何なの。私のことを愛していないのね。」
デリラの誘惑に負け、サムソンは、自分の長い髪こそ、奇跡を起こす秘密であることを打ち明けてしまう。
酒に酔って寝入ったサムソンの髪を切り落とし、復讐に燃えるデリラ。
髪を切り落とされ、もはや神の力を得られなくなったサムソン。
こうしてサムソンはペリシテ人の奴隷として囚われ、目をつぶされる。
長く続く奴隷生活と、ペリシテ人からの罵倒。
そして最期は・・・・。
オペラ最期の場面で、崩れ落ちるペリシテの宮殿に、
観客からわきあがるどよめき。
すばらしい演出だった。
実は、このオペラを観た時、第一幕でちょっとがっかりした。
とてもゴチャゴチャしてるの。
前日、「ボリス・ゴドゥノフ」を鑑賞したこともあり、
なんちゅうか、この<多声的構造>と、<これでもか管弦楽法>が、やたら気になる。
サン・サーンスちゃん、すっごく頑張ってるんだけど、
第一幕の群集の合唱は、多くの声部がありすぎて、まとまりがない。
『オペラでは、もひとつの作曲家ちゃう?』と、
始まってすぐに、がっかりしてしまったのだった。
一番、気になったのは、歌い手の旋律の音域と、ほぼ同じ音域を、楽器で鳴らしているために、旋律がひきたたない。
これは、映像音楽作家の栗○和樹先生の授業で、「映像音楽の禁則」にあたる。
何から何まで贅沢にしようとするがゆえに、歌と管弦がかぶってる。
けれど第二幕が始まって、印象ががらりと変わった。
サムソンとデリラのアリア。これが素晴らしくよかった。
このアリアを切り取って演奏会の演目に並べたら、みなウットリするに違いない。
サン・サーンスは、こうした単旋律のアリアが得意なんだと思えた。
歌の旋律を支える伴奏も、次々と変化する。
「さっきは歌を弦楽器で和音で刻んだけど、
ココでハープのアルベジオでやってるんだぞ!」みたいな・・。
私が最もお気に入りになったのは、第二幕から第三幕の場面転換のとき。
ここで管弦楽のみ独立した音楽が登場する。
とにかく、ここの音楽だけで、『管弦楽法』の本書けるんちゃうかと思うほど、
さまざまな楽器を駆使した音楽が鳴らされる。
序曲ではなく、間奏としての管弦楽。
いや~~、才能を見せつけてやろうという意識、
オペラ観ながら、じんじん感じる。
そしてやってきたクライマックス第三幕。
「オレはフランス人。
フランスオペラといえばバレエ。
ここで観客をバレエに陶酔させてやるぜぃ!」みたいな・・。
こうして始まった魅惑的、官能的なバレエ。
歌がない。オケとバレエでの場面。
その昔、フランスのオペラといえば、もともとバレエが混在するオペラ・コミック(やったかな・・。)がオペラの発端で、これがイタリアオペラと違うところだったんだよね。
バレエを組み入れたオペラ。よかねーー。
こんなわけで、合唱や二重唱ではモヒトツのサン・サーンスちゃんだったけど、
サンちゃんの引き出しの多さに驚かされたオペラだった。
サンちゃん、贅沢なオペラをありがとう★
(誰がサンちゃんやねんっ!sunnbasenn)