結論先にありきの法人税減税論議に異議あり! | 岐路に立つ日本を考える

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 私は日本を世界に誇ることのできる素晴らしい国だと思っていますが、残念ながらこの思いはまだ多くの国民の共通の考えとはなっていないようです。
 日本の抱えている問題について自分なりの見解を表明しながら、この思いを広げていきたいと思っています。


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 トヨタ自動車が過去5年に渡って法人税を支払っていなかったことを豊田章夫社長が明らかにして、話題を呼びました。トヨタはそんなに赤字に苦しんできたのかと思われた方もいるかもしれませんが、実態は随分と違います。

 トヨタは2009年に4400億円の赤字を計上したため、2009年は当然税金を支払っていません。2010年に2000億円の黒字を出したと言っても、前年の赤字と相殺になって税金を支払っていなかったというのも理解できるところでしょう。しかし2011年にはさらに4000億円の黒字を出しているので、2009年に生じた欠損はすでにこの時点で完全に埋めきっているはずです。にも関わらず、トヨタは法人税の支払いを免れてきたわけです。なぜでしょうか。様々な節税処置が用意されていて、そうしたものをフル活用しているから、払わなくても済んでいたわけです。

 以下のグラフを見て下さい。資本金額に応じた法人税の負担率を表すグラフです。これは日本共産党の佐々木憲昭氏が作成されたもので、申告所得に減税効果のあった収入項目を加算して、本来の所得額に対して法人税額がどの程度であるかを計算したものです。共産党が作っているグラフですから、そのまま客観的な真実だと信じるのは危険かなとも思いますが、トヨタが累損解消後も法人税を支払ってこなかった事情を理解するのに役立つかなと思い、取り上げました。


 一般に資本金額が少ないと企業収益も小さくなり、年間利益800万円以下だと法人税も低い税率しか適応されないため、税の負担率は低くなります。逆に資本金額が大きくなれば企業収益も大きくなり、高い法人税率が適応される利益部分が大きくなり、税の負担率は上がる傾向にあります。

 ところがこのグラフでは資本金が5億円を超えたあたりから負担率は低下傾向にあり、特に連結決算を採用している主としてグローバルな展開をしている企業においては、法人税の負担率が極めて低いことになっているということがわかります。大企業の方が利用しやすい節税手法というものがあったり、連結法人には認められる節税手法というものがあったりする結果だと考えればよいかと思います。

 ところで、企業が負担するのは租税に加えて社会保険料もあります。法人税率が高く企業負担が重いから引き下げましょうという話になっているわけですが、社会保険料も加えた企業負担というのはどの程度なのでしょうか。企業が負担する税金と社会保険料の合計が、GDPに対して何パーセントになっているかというグラフを見つけましたので、ここに掲載します。


 日本の企業負担率は少なくとも欧州よりは随分低いことがわかります。そしてそもそも法人税の比率にしても、言われているほど重いとは決していえない水準であることがわかるでしょう。

 現在の法人税減税先にありきの議論は、私にはフェアなものだとは到底思えません。消費税の増税分を法人税の減税分にあてるようなやり方は、国民の理解を得られるものだとは思えません。冒頭に5年間法人税を払ってこなかったトヨタの例を取り上げましたが、トヨタには消費税の輸出還付金(消費税は国内消費に向けた税金であり、輸出する場合にはかける必要がないので、下請けなどが負担してきた消費税額を輸出企業が税務署から還付して受け取る金額)が年間で2000億円を超えて支払われています。このように消費税には輸出企業に対する補助金という性格があり、それゆえに輸出大企業のトップは消費税増税を熱烈に説いてくるわけですが、こういう実態をよく知った場合には、公正性の観点でどうかと思う人は非常に多いのではないかと思います。

 法人税減税に関しても、結論が決まっているところから話を始めるのではなく、総合的にみた公平性をどう考えるかという観点から、冷静な議論に戻ることが必要だと考えます。


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