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中国の習近平国家主席がボアオ・アジアフォーラムに出席した実業家たちと懇談し、中国への投資を増やすことを求めたことが伝えられました。ところで、習氏は具体的にどのようなことを述べたのでしょうか。
中国共産党機関紙の人民日報のウェブ版である人民網の日本語版には、習氏の言葉が載せられていました。それを引用してみます。
「中国の市場環境は公平だ。(中略)われわれの外資導入政策が変わることはなく、法にのっとり外資系企業の合法的権益を保障する」
賄賂を渡さないと許認可が降りないとか、賄賂を渡せば法もねじ曲げてもらえるという状況が、習氏にとっては公正な市場環境だということらしいです。中国共産党の内部からの指導で反日デモが組織され、日系企業の襲撃が行われながら、これに対する補償すら行われていない状況であるのに、外資系企業(とりわけ日系企業)を平等に取り扱っていて、合法的権益を保障していると、彼らは考えているようです。なにせ「われわれの外資導入政策が変わることはなく」と述べているわけですから、これまでも十分に「合法的権益を保障」してきたと考えているはずです。
さらに習氏は次のようにも述べています。
「中国の開放の扉が閉じられることはない。過去10年間、中国はWTO加盟時の約束を全面的に履行し、より開放的で規範化されたビジネス環境を実現した。」
中国漁船による海上保安庁の巡視船に対する体当たり事件を契機として、日本に対するレアアースの輸出制限処置を取ったことを忘れてしまったのでしょうか。この問題は現在、WTOに専門の紛争処理小委員会が設置されて審理されています。他にも日本製のシームレス鋼管の輸入制限処置など様々な問題でWTOへの提訴がなされています。「WTO加盟時の約束を全面的に履行し」とは、よく言えたものです。
習氏はさらに続けます。
「われわれはいかなる形の保護主義にも断固反対する。関係国間の経済貿易分野の溝を話し合いによって適切に解決し、バランスのとれた、ウィンウィンの、発展に注目する多国間経済貿易体制の確立を積極的に促したい」
外国の自動車メーカーへ輸出する部品に対してまで多額の補助金を付けて優遇するのは保護主義ではないのでしょうか。不当な為替介入によって元高を阻止しているのは保護主義ではないのでしょうか。日本から得た新幹線技術を「独自技術」と言い放って、諸外国に売り込みをかけるようなやり方が、日本との「バランスのとれた、ウィンウィンの」やり方なんでしょうか。どうも我々の持つ一般常識を習氏は持ち合わせていないようです。
習氏はさらに言います。
「中国の発展は全般的に良い状況にある。中国は今後相当長期間、発展の上昇期にあり、工業化、情報化、都市化、農業の現代化が巨大な国内市場をもたらす。」
中国はバブルの延命に汲々としてきたほころびが目立ち始めました。所得格差の大きさを表すジニ係数は、社会騒乱多発の警戒ラインの0.4を遥かに超え、0.61(西南財経大学調べ)に達し、これは世界最悪水準です。環境汚染も世界最悪水準にあり、揚子江も黄河も水が流れなくなるほどの水不足にも陥っています。加えて、社会保障制度が未整備なまま急激な人口高齢化を迎えることにもなります。これまでのような成長環境が中国にあるとはとても私には思えません。
そして習氏の話の極めつけはこれです。
「中国の発展は世界に恩恵をもたらすものだ。中国の発展はまず隣国に恩恵をもたらした」
中国の膨張に伴い、中国と隣接する国のほとんどで様々なトラブルが発生しています。ベトナムと半々で分け合っていた西沙諸島からベトナムを実力で排除し、滑走路や港などの整備を行いました。米軍がフィリピンから撤退した後に、中国はフィリピンが領有権を主張する南沙諸島を占領し、軍事基地化を進めました。ブータン王国は国土の2割を中国に奪われました。国境を画定したはずのロシアとの間にも、ロシア領内への中国人の侵入が止まらず、争いが起こっています。インドなどとも領土と水を巡る争いを引き起こしています。我が国の尖閣諸島が目下狙われているのはいわずもがなです。中国の発展は隣国に災いは大いにもたらしましたが、大した恩恵はもたらしてはいません。
以上を受けての、習氏の結論はこれです。
「中国の扉は引き続き各国の投資家に対して開かれる。」
以上の話を前提とすれば、こんなものを期待するのは間違いだということは明らかですね。いかに厚顔無恥な国であるかということを、日本の経営者はよく肝に銘じるべきだと思われた方は、ブログランキングへの投票をお願いいたします。
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