リン(P)にまつわる症例
腎臓は、副甲状腺ホルモンや骨細胞によって分泌される繊維芽細胞増殖因子23による調節を受けて、カルシウム(Ca)、リン(P)を尿中に排泄する一方、活性型ビタミンDの産生臓器として腸管でのカルシウムやリンの吸収、骨代謝の維持に関与しています。このため、慢性腎臓病患者では、腎機能の低下とともにカルシウム・リンの代謝、ビタミンDの代謝に異常が生じます。
このような病態は、慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常とよばれます。
この病態の管理は生命予後の改善を目指すうえで非常に重要と考えられます。
とくに高リン血症は血管石灰化の要因となり、二次性副甲状腺機能亢進症の発症・進展にもかかわります。
食事指導
血清リン値の管理
血清リン値の管理としては、まずHDでのリンの除去、食事でのリン制限が基本です。食事療法でリン制限を行う際は、栄養状態を良好に保つため、たんぱく質と比べてリンを多く含む、リン/たんぱく質比の高い食品(乳製品、小魚、加工食品、ファストフード、インスタント食品など)を控えるように指導します。
植物性たんぱく質に含まれるリン酸は吸収効率が低いことから、動物性よりも植物性のたんぱく質を優先して摂取するよう指導しましょう。
薬物療法
リン低下薬
実際は、食事療法のみで良好なコントロールを得ることはむずかしく、多くの症例でリン低下薬が必要となります。リン低下薬の使用は、リン摂取制限を緩和することで栄養状態の改善にもつながる可能性が示されています。
カルシウム含有リン吸着薬
カルシウム含有リン吸着薬を使用する場合は、過剰投与による高カルシウム血症にも注意が必要で、注意深くモニタリングすることが望ましいでしょう。
カリウム(K)にまつわる症例
カリウム(K)とは何か
カリウム(K)とは電解質(水に溶けるとイオンとなる物質)であり、生命維持に必須の元素です。
ヒトは1日約50~100mEqのカリウムを摂取しており、そのうちの約90%が腎臓から、残りの10%が消化管から排泄され、体内のカリウム総量は、つねに一定の範囲に保たれています。
血清カリウム値の基準値は、おおよそ3.5~5.0mEq/Lとされています。
透析患者は高カリウム血症になりやすい
・透析患者特有の理由
透析患者は腎臓の機能が廃絶しているため体外へのカリウム排泄ができず、高カリウム血症になりやすい状態にあります。心臓で、高カリウム状態は高率に不整脈をひき起こし死に至る危険性が高いといわれています。
高カリウム血症は、腎機能が障害されるほど死亡リスクが増加します。
・高血圧治療薬の服用
摂取状況以外に高カリウム血症になる原因として、一部の高血圧治療薬が知られています。
アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬などは、臓器保護作用にある高血圧治療薬として広く使用されており、透析患者でも同様に使用されている。
アルブミン(Alb)にまつわる症例
アルブミン(Alb)の役割
アルブミン(Alb)は、肝臓で産生される血液中のたんぱく質であり、血管内に水分を保持するはたらきや、脂肪酸・ホルモン・薬剤などを体内に運搬する役割を担っています。
血清アルブミン値は日常診療で広く測定されており、透析患者の全身状態を把握するための基本的な検査項目の一つです。アルブミンは体内での代謝回転が比較的緩徐であるため、短期間の変化よりも、中・長期的な健康状態を反映する指標であると考えられています。
透析患者におけるアルブミンの重要性
透析患者を含む慢性腎臓病(CKD)患者では、特有の栄養代謝異常であるたんぱく質・エネルギー消耗状態(PEW)が存在しており、その診断項目の一つである生化学検査異常に低アルブミン血症が含まれています。
PEWは、たんぱく質およびエネルギーが枯渇した状態であり、①低アルブミン血症などの生化学検査異常、②体格の評価、③筋肉量の低下、④食事摂取量の低下の各項目いあるそれぞれの条件のうち、少なくとも一つ以上の条件を満たす項目が三項目以上認められる場合に診断されます。
・血清アルブミン値低下の要因
血清アルブミンは、肝障害に伴う合成の低下や悪性腫瘍による消費の亢進によって低下するだけでなく、慢性的な炎症や感染が存在すると炎症性サイトカインの影響を受けて低下します。
透析患者における低アルブミン血症の理由
アルブミンは、炎症性サイトカインの影響によって肝臓での合成が抑制され、さらに分解の亢進や血管外への漏出が進むため、血清アルブミン値は低下します。透析患者では、歯周病やVA感染、肺炎に加え、透析手技や透析膜、透析液などの影響によって慢性的な炎症が生じやすいことが知られています。
血糖管理にまつわる症例
糖尿病透析患者における血糖管理指標
糖尿病透析患者の血糖管理指標として必要な検査は、透析開始前の透析前血糖値(随時血糖値)とグリコアルブミン(GA)です。
一般の糖尿病患者ではHbA1c値が血糖管理の指標として使用されていますが、透析患者ではHbA1c値は実際の平均血糖値よりも低く出てしまいます。透析患者では、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)の使用や血液透析(HD)による失血の影響を受けて赤血球寿命が短縮することで、HbA1c値は平均血糖値に比べて低めになることがわかっています。
標準化透析量(Kt/V)にまつわる症例
標準化透析量(Kt/V)とは
標準化透析量(Kt/V)は尿素の除去効率の指標です。尿素は身体の水分(体液)の中で基本的に均一に分布します。透析で生成された、尿素をまったく含まない体液総量を「クリアスペース」とよびます。また、単位時間あたりに生成されるクリアスペースを「クリアランス」とよびます。
標準化蛋白異化率(nPCR)にまつわる症例
透析患者と栄養
透析患者では蛋白質やカリウム(K)、リン(P)などさまざまな栄養素の制限が推奨されていますが、制限しすぎると低栄養やサルコペニア(筋減少)、フレイル(心身虚弱)などをひき起こすため、注意が必要です。
ヘモグロビン(Hb)にまつわる症例
ヘモグロビン(Hb)とは
ヘモグロビンは、ヘム鉄とグロビンが結合したもので、赤色を帯びています。ヘモグロビンは、血液の中で酸素分子と結合する特徴があるため、肺で酸素と結合し、肺から全身の抹消組織に酸素を運搬する役割をもっています。
一般的にヘモグロビン値は、貧血の指標として用いられており、ヘモグロビン値が低いと貧血と診断されます。