胸部X線の基本的な読み方と所見の定義

①読影を始める前に、撮影条件を必ず確認する

②精密な読影よりも、致死的疾患の除外を優先する

③読影の順番を固定して、胸部全体をくまなく観察する

④疾患名よりも、陰影のパターン分類を意識する

 

・読影前に必ず確認すること

A-P撮影では心拡大や縦郭拡大が過大評価されやすい点を理解しておく必要があります。

棘突起が左右の椎弓根の中央に位置していない場合は斜位撮影であり、左右差の評価に注意が必要となります。

 

・順番を固定した読影法

見落としを防ぐ最大のコツは「毎回同じ順番で観察すること

1つの所見を見つけてもそこで慢心せず、最後まで胸部全体を観察することが重要

 

1)全体像(心陰影・肺容積)

心臓はCTR(心胸郭比)を見ます。正常では50%以下ですが、A-P撮像、ポータブル撮像では心陰影が拡大されて描出されることに注意すべき。

坐位や仰臥位で撮像された場合には横隔膜が挙上し、肺容積が減少しているように描出される。

 

2)骨・軟部組織・横隔膜

胸郭の左右差、骨折や術後変化、皮下気腫の有無を確認します。横隔膜は左右差と輪郭を評価し、肋骨横隔膜角(CP angle)が鋭角かどうかを見ます。胸水はCP angleの鈍化に着目します。

 

3)心臓・縦隔

上縦隔陰影の拡大は、気管分岐部より上の高さで左右縦隔外縁間の距離を目安に評価します。一般に約8cm以下が正常とされますが、AP撮影や吸気不良により見かけ上拡大して見えることがあるため注意が必要。

上縦隔陰影の拡大がみられる場合は大動脈疾患(大動脈解離、大動脈瘤)や縦隔出血が示唆されるため要注意です。

 

4)肺野

肺野は同一の高さで、左右差を意識しつつ右→左と視点を移し、肺尖部~肺底部まで読影します。次に肺野の血管を一本一本意識しながら、片肺ずつ、肺門から抹消へ放射状に観察します。肺尖部、肺門部、心陰影・横隔膜に重なる領域は特に見落としが多く、最後にもう一度確認することが重要。

 

肺野病変のパターン分類

胸部X線写真では、疾患名よりも陰影のパターン分類が重要です。

1)肺胞性陰影(浸潤影・コンソリデーション)

肺胞性陰影は肺胞腔内が液体や炎症細胞で満たされた状態で、胸部X線では境界不明瞭で均一な白い陰影として描出されます。肺胞性陰影は「ベターっとした」白い印象を受けます。

肺胞性陰影がみられる代表的な疾患として肺炎、肺水腫、肺胞出血、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)があげられます。

 

2)間質性陰影(線状影・網状影)

間質性陰影は肺胞壁、小葉間隔壁、気管支血管周囲の肺間質の肥厚を反映する所見です。胸部X線では細かい線状影や網状影、粒状影によって「肺野が汚くなった」印象を受けます。間質性陰影がみられる代表的な疾患として間質性肺炎、間質性肺水腫があげられます。

 

3)結節影・腫瘤影

比較的境界明瞭な円形、類円形陰影で3cm以下のものを結節影、それよりも大きいものを腫瘤影と呼びます。結節影、腫瘤影がみられる代表的な疾患として肺がん、転移性肺腫瘍、肉芽腫性疾患などがあげられます。

 

4)容積変化(無気肺)

肺容積の減少を伴い、しばしば縦郭偏位や横隔膜挙上を伴います。無気肺をきたす原因として気道閉塞、術後変化、粘液栓、腫瘍による閉塞などがあげられます。

 

 

抗酸菌感染症の画像所見

①胸部X線写真を見たら、まず肺結核を疑え!

②胸部CT写真でtree-in-bud-patternや「線香花火」様の所見を見たら、肺結核らしいと考える

③肺MAC症の典型像「結節・気管支拡張(NB)型」を目に焼き付けるべし

 

 

肺がんの画像所見

①”肺がんに見えない”IMA・縦郭型肺がんに注意する

②”肺がんに見える”画像所見に遭遇した場合は陰影の辺縁に注目する

 

 

びまん性肺疾患の画像所見

①「肺のサイズ(容積)」の変化を、過去画像と比較することで読み解く

②網状影・粒状影の分布(上下・内外)を捉え、鑑別の足がかりにする

③急激な陰影の出現は、既存の間質性肺炎の「急性憎悪」を常に念頭に置く

ここがポイント

「異常がある」と気づくだけでなく、「過去と比べて肺が縮んでいるか」を評価することが、繊維化を見極める最短ルートです。

 

代表的な疾患のX線・CT所見

1)特発性肺線維症(IPF/UIPパターン)

特発性肺繊維症(IPF/UIPパターン)では、X線で下肺野・外側優位の網状影がみられ、進行とともに横隔膜挙上など肺容積の減少が顕著になります。CTでは胸膜直下・下肺野優位の蜂巣肺や索引性気管支拡張が確認できます。

 

 

呼吸器救急疾患の画像所見

①まず”条件”を読む:仰臥位では心陰影・縦隔が拡大し、胸水や気胸は判断しにくい

②読影を”手順化”して見逃しを減らす:条件→デバイス位置→気管/肺野/心陰影/縦隔/横隔膜/骨軟部など、毎回同じ流れにする。可能なら同条件の過去写真と比較する

③アーチファクトに注意:皮膚のひだ、衣服、チューブ、肩甲骨縁などが気胸線を模倣しうる

④X線単独に固執しない:胸水・気胸は臥位で検出力が落ちる。ベッドサイドエコーの実施やCTで確定し、治療遅延を避けよう

 

 

循環器疾患の胸部画像所見

①胸痛では縦隔拡大から大動脈解離を疑うことが重要である

②心不全では心陰影拡大と胸水の評価が重要である

③肺高血圧症では肺動脈拡大と心形態変化に注目することが重要である

 

 

X線で見逃しやすい胸部疾患

①初回の胸部X線では正面像と側面像の2方向で撮影する

②見逃しやすい部位として、正面像では肺尖部の左右差を比較する

③見逃しやすい部位として、側面像では胸骨の背側、心臓・横隔膜の背側、椎体を確認する

 

1⃣正面像における確認

肺尖部では、左右差の有無を評価します。

正面像では、肺尖部に左右差はありません。結節や腫瘤影があると、部分的な左右差が出現します。

特に、肺結核は肺尖部に結節影や空洞を呈しやすく注意する必要があります。