おばあちゃんロスが・・激しい。
最近、ちょっと知りたいことがあって、ある八百屋さんに入り浸っていた。
かなり小さなお店なんだけれど、周りに大型スーパーがない中で、痒いところに少しだけ
手が届くお店。
八百屋の匂いって、独特で結構好きなんだけど、
青くささと、ダンボールの匂いとが入り混じっている。
そして八百屋さんが書く字には独特なクセがある。
平べったいペンで価格を書いて行くのだけど、その使い方を心得ている。
滲むことが計算に入っていて、怯まず思いっきり、堂々と書かれている。
そんな、昔ながらのお店にはおばあちゃんがよく来るのです。
3cmくらいの段差を上がるのに、足をよいしょっと持ち上げながら店内に入って来るのだ。
「昔はね、こんなに遅くなかったのよ。だんだん体が言うこと効かなくなってしまって。いやねぇ〜」と笑って、小松菜を放り投げる。
投げる場所は床に置いた買い物カゴ。
店主はそれに比べたら足も動くし、力持ちだけれど、そろそろ70になろうとする御歳。
レディには優しく、大根やらなんやらをポンポン放るレディへの手伝いを忘れない。
「そこの玉ねぎも取ってくれるかしら?」
「玉ねぎは、新しいのと古いのがあるんです」
「サラダにしたいから新しいのもらうわ」
「は〜い、じゃあこれですね〜」
そしてやっぱり、買い物かごをレジに持って行くのも店主なのです。
毎日コツコツ、朝5:00に市場に出向き、夜18:00まで店を開けるのだ。
お礼に、ポスターを作ろうと、キャッチコピーどうしましょうかと聞くと、
「老人介護のお店」と書いてくれと、笑いながら言う。
店主はみんなから愛されているのだ。
先日、成功の遺伝史を観ていて
樹木希林さんのエピソードで、
すごく大切なものを思い出した。
樹木希林さんの成功の遺伝史は
「普通の人」
人を演じるのに、人を描くのに、
芸能人だからとか、女優って職業だからとか、分け隔てなく普通に過ごすことが大切って。
本当にそうだ。
普通の中に飛び込んでみないとわからないこと。
誰かの悩みや仕組みや大切なもの。
新しいものを見つけるために。
お店に来たおばあちゃんが一言、置いていってくれた。
「やっぱり笑って過ごさなきゃね。今まで随分泣きすぎたから」って。
腰を曲げて、くちゃくちゃの手で、ガラガラを押しながら、そう言って帰って行った。
そのおばあちゃんの若い頃、ワンピースを着ている姿が一瞬頭に浮かんで、
心がほどけた。
なかやまえりか