花束みたいな恋をした」を観た。

 

 

 終電を逃し、改札付近に居合わせた4人の男女。サラリーマンらしき30代の男性、OLらしき20代後半から30代の女性、大学生らしき男性、大学生らしき女性。始発までの時間つぶしで、一緒に朝までやっているお店に行くことになる。それがきっかけで始まる大学生二人のラブストーリーだ。どちらかが病気で死んでしまうわけでもなく、タイムリープするわけでもなく、殺人事件に巻き込まれることもなく、ビバヒルみたいに仲間内で恋人をとっかえひっかえするわけでもない。ちゃんと告白して付き合って、5年間一緒に暮らして、ちゃんと「別れよう」って話し合って別れる、極めて健全な恋愛模様。

 

 結果、学生時代にそんな経験をしていないワタクシ、オーガニックな出会い方をしていないワタクシには、ほとんど共通点がなくて、感情移入できるポイントは少なかった。。。貼り付けた予告動画の最後に、「この冬、誰もが涙する」というコピーがあるが、誇大表現だ。誰もが涙する映画なんて、そうそうない。特に、事件性がない恋愛映画なら、捉え方は観る人によって千差万別だ。ワタクシは、同じ恋愛映画でも「窮鼠はチーズの夢を見る」みたいな映画に大いに感情移入してしまうタイプだ。同性愛が好きというわけではなくて、自分が一番好きで、人を好きになっても本気になるのは躊躇があって、ポーズを取ったりするけれど、どれもこれも中途半端・・・・みたいな息苦しさに共感してしまうタイプだ。(窮鼠はチーズの夢を見るの感想はこちら。)

 

 年齢も経験も異なる40代のワタクシが「花束みたいな恋をした」を観て、共感したポイントは二つ。

ひとつは、付き合う前のふわふわドキドキする独特の高揚感。会話の中で、共通点が見つかる度にメーターが上がっていく感じ。そこは素直に共感できたことに、ホッとしている。

もう一つは、男性のファッションで白いデニムはNGだというような主旨のセリフだ。

 

 あとは、こういう考え方もあるのね~、こういう恋愛の仕方もあるのね~という感じ。あくまでも他人事で、どこか遠い世界の出来事みたいだった。仮に、20代半ばのワタクシがこの映画を観ても、今のワタクシと同じ感想を持ちそうな気がする。だって、20代半ばのワタクシは、恋愛とは無縁だったからな。

 

 

映画が面白くなかったわけでは決してない。

後半のだんだん一緒に暮らしているのがつらくなっていく感じとか、ものすごくリアルだな~と思ったけど、ワタクシには全然引っかからなかったんだ・・・。全然ひっかからなかった、ただその事実があっただけ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

藪原検校」を観た。

 

 

タイトルの「藪原検校」は「やぶはらけんぎょう」と読むのだが、主人公の男の役職名でもある。稀代の悪党として名をはせた、生まれながらに目が見えない男の一代記だ。

 

大人のわりにモノを知らないワタクシは、何の予備知識もないままにこのお芝居を見に行ったのだが、検校は「中世・近世日本の盲官(盲人の役職)の最高位の名称」であるらしい。ウィキペディアによれば、盲官には他に、位の順に別当、勾当、座頭などがあるらしい。その盲官のトップに君臨するのが検校で、この舞台では高貴な紫の衣装を身にまとい、頭巾をかぶり、高価な杖を持つことを許されていた。

 

このお芝居は、生まれながらに目が見えず、さらに父譲りの性悪と、母譲りの見た目の悪さ、両親の悪いところを濃縮して生まれついたという筋金入りの悲惨な設定の男が、悪知恵、話芸の才能、エロの才能などを活かしつつ、血で手を染めつつ、2度も師匠殺しをしでかして、検校として盲官のトップに上り詰め、死ぬまでの話だ。

 

辛辣を煮詰めたような話なので、当然観ていていい気分がいいものではないのだが、引き付けられる舞台だった。ワタクシ的ハイライトは3つあった。

 

一つ目は、市川猿之助さんが演じる杉の市(藪原検校になる前の名前)の劇中劇の場面。一つの物語(演目)を、狂言、歌舞伎、浄瑠璃、謡(このあたりはワタクシの記憶によるあいまいなもので、正確な表現ではない可能性が高い)といった様々な古典芸能の語り口を織り交ぜ、矢継ぎ早に展開していくというシーンがあるのだが、その膨大なセリフの量と流暢な語り口に、ひたすら圧倒される。あまりのセリフが長いのと、「立て板に水」の上を行く早口っぷり、さらには古典芸能独特の言い回しに、途中内容を理解するのを諦めた。終盤気を取り直してよく聞いていると、めっちゃばかばかしくて笑える話ではないか!その時になって、中盤もちゃんと集中して聞いておけばよかった・・・と激しく後悔した。

 

二つ目は、杉の市(市川猿之助さん)とお市の濡れ場。杉の市が師事する琴の市(盲目の座頭)の女房、お市(松雪泰子さん)と通じる場面だ。琴の市の目が見えないのを良いことに、お市が琴の市に「安寿と厨子王」の話を語り聞かせながら、実は杉の市と交わっている場面。歌うような、喘ぐようなお市さんの発声と仕草が妖艶で、思わず生つばゴクリ・・・・。ただならぬ色気と艶めかしさだった。

 

三つ目は、最後のシーン。藪原検校は処刑されるのだが、それを役人に進言する塙保己市(はなわほきいち/三宅健さん)のシーンだ。塙保己市も藪原検校と同じく検校の身分なのだが、悪行を積み上げ金に物を言わせて検校の地位を手に入れた藪原検校とは対照的に、品格を旨とし、知性や清廉さで検校の座に就いた清い検校だ。保己市と藪原検校は、己の考え方を語り合ったことがある間柄。考え方こそ違えど、目が見える人に馬鹿にされたくない、軽んじられたくない!心の底にあるその強い思いは共通しているように見えた。その保己市があっさりと、実に淡々とした口調で藪原検校の処刑を進言するシーンは鳥肌が立ったし、さらにその処刑法が恐ろしく残忍で背筋が凍った。

 

最後の最後で、難解な善と悪を突き付けられた。

否が応にも、考え続けることを強られるようなラストだった。

 

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の葬式では

この曲を歌ってくれと

さとるに言った

 

上記は、ワタクシの大好きな常田大希君がつぶやいたツイートだ。

「この曲」というのは、映画「ヤクザと家族 The Family」の主題歌「FAMILIA」だ。

自分の生み出した音楽に、それほどの感情が抱けるのはとても素晴らしいことだと思う。

 

さて、そのツイートを見たワタクシ。

自分のお葬式に流れたらいいなと思うのは、THE BLUE HEARTSの「情熱の薔薇」。

 

 

”永遠なのか本当か 時の流れは続くのか

いつまで経っても変わらない そんなものあるだろうか”

 

”なるべく小さな幸せと なるべく小さな不幸せ

なるべくいっぱい集めよう そんな気持ち分かるでしょう”

 

というAメロの歌詞が特に大好きだ。

 

この音楽みたいに、揺るがない芯をもったシンプルでかっこいい人生。

そんな人生の終わりを、この曲で締めくくる。

 

 

 

 

 

 

 

ヤクザと家族 The Family」を観た。

 

 

1999年、2005年、2019年。

一人のヤクザの生きざまを3つの時代に焦点を当てて描いた物語。

タイトルが秀逸だ。「ヤクザと家族 The Family」。カタカナと漢字と英語。「ヤクザと家族」だけは終わらず、「The Family」が含まれている意味。その真意はわからない。だけど、この映画を観終えると「ヤクザと家族」だけでは十分ではない、そう感じた。この映画を観たひとり一人が、「The Family」の中に潜む含蓄の深さに想いを巡らせるはず。

 

鑑賞後の感傷に思う存分浸るためにも、エンドロールが終わるまで席を立たない方がいい。この映画はエンドロールで流れる主題歌「FAMILIA」がこの映画の締めくくりとしてとても重要だと思うから。この映画のタイトルに「The Family」が加わってはじめて完全体となるように、この映画は本編とエンドロールで流れる主題歌「FAMILIA」が合わさることで、大きな相乗効果が生じて、観る側の感情が爆発する。

そういう感覚はなかなか味わえるものではないと思うから、機会があるのならぜひ映画館で堪能してほしい。

 

 

ヤクザ映画だから暴力シーンなど目を背けたくなる場面もあるけれど、単なるヤクザ映画ではない。時代の移り変わりの速さと、それに伴う生きざまの変化が鮮やかに描かれていて、強烈に引き付けられる。特に、北村有起哉さんが演じる若頭が言い放つ「ヤクザとは・・・である」という衝撃のセリフ。そのヤクザの定義とその後の変化がとても切ない。

 

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えんとつ町のプペル」を観た。

 

 

キングコングの西野亮廣さんが原作、製作総指揮を手掛けているということが強調されていて、本質的じゃない点が少しうるさく感じるけど、余計な情報を取っ払って、フラットな気持ちで観たらすごく面白いと思う。

ワタシは好きだな。

 

昼夜を問わず煙がたちこめる町のスモーキーで息苦しい感じ。それとは対照的なルビッチ親子の綺麗な瞳の色。話だけじゃなく、絵もとても印象的だ。序盤のジェットコースター的な流れも、映画館で体験するとすさまじい臨場感でドキドキするし。

ただ、夜空の色はワタクシの好みではない。夜空に赤や茶色があるのは好きじゃない。さらにいうなら、煙を超えたその先にあるのは、夜空に輝く星じゃなくて、すっきりと澄み渡る真っ青な空にするな、わたしなら。だって、その方がコントラストが際立つじゃないか・・・。

でも、多分それは素人の浅知恵なのだろう。

 

歌も好きだ。歌い手の声も好き。

 

 

声がいいと言えば、伊藤沙莉さん。アントニオという男の子の声を担当しているのだけど、とても素敵ないい声だ。

 

☆☆☆☆