読み応えのあるノベルゲームをやりたいなぁと思っていて、
ふと目に留まったタイトル「ワールドエンド・シンドローム
割とハマってしまい、読了してもこの世界から別れがたい感覚に陥りました。

ミステリー×恋愛アドベンチャーということで、
主人公はヒロインとなるキャラクター5人を攻略しつつ
「魅果町」にまつわる伝記や事件に深入りしていくことになります。

物語の流れで登場人物との恋愛が発生するADVはあるけれど、
好感度を上げて各ヒロインルートに突入しなければならないという
ゲームをやるのは、たぶん初めて。

どこかで詰まったら攻略サイトを覗いちゃおうと思っていましたが、
じっくりゆっくり読み進めて、
特に詰まるところもなく物語のラストまで到達できたので
ゲームとしての難易度は低い方かな。

キャラクターの絵柄が好み。
それから背景美術が秀逸。風が見えて心地良い。

しかしこれはミステリーなのか?
女子高生の連続失踪事件が起こり、
その遺留品を偶然発見することになるのですが、
失踪者とは特に面識もない、ただの高校生である主人公が
事件を解決するという流れにはならないため、どこか他人事。
というかそんな事件、恋愛に忙しくて気にしていられない。

更に「黄泉人」という伝奇要素が絡んでくる時点で、
私は序盤から推理をするのをやめて、
ミステリだとは思わずただひたすら物語を読み進めるだけにしました。
メタ視点で考えてしまうと、
おそらく最終的に人外キャラが出てくるであろう物語は、
常識的に推理しても無意味だったりするもので。


ストーリー以外に収集要素もあるので、
ついでにそれも全部埋めつつ、物語を2周して総プレイ50時間くらい。
全編じっくり読み応えのある良い作品でした。







↓以下、ネタバレありの雑文感想になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







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ヒロインとの恋愛要素はそれぞれ楽しかった。


個人的にはいじりがいのある沙也が可愛くて好き。

正体を隠して一般生徒に紛れ込むアイドルとの恋愛、ベタだけど楽しい。

舞美の唐突な告白は、今までのどこにそんな伏線が!?と驚いた(笑)。

クールな未海がじわじわデレてくる過程がかわいい。

雪乃とのエピソードだけは恋愛か?みたいな違和感があったものの、
真相を知れば、姉に対する感情だったのだと理解できるし、
やりとりのニュアンスが全く異なるので再読が楽しくせつない。

ところで舞美ルートでは
なぜ二人が黄泉人ではないかと勘違いされたのだろうか。
何かそういうエピソードあったっけ?
大和さん達、意外と行き当たりばったり感。
あと壬生が舞美に執心していた理由もわからず。
香織に対する当てつけで最終的には殺そうと考えていた?

この作品でのループ(デッドエンド→最初に戻る)は、
主人公にとっては記憶のリセットにあたり、
結局、真相に至るには未海以外のヒロインたちとの楽しい日々が
「なかったこと」になってしまうので残念……
某ゲームの主人公のようにループの記憶を保持しており
恋愛感情も積み重ねられていったら良かったのだが物語的に無理か。

とはいえ、なかったことになったはずのエピソードが
真相編にしれっと登場している辺りの矛盾はわざとなのだろうか。
竜崎が腹を刺されたとか、
花子の正体を知っていたor知らないの選択肢とか。


序盤、主人公の名前を入力するという唐突な流れにより
「これはたぶん偽名なんだろうな」と思わせつつ、
主人公が怪しい奴→もしかして主人公自身が黄泉人なのではないか?と
プレイヤーに間違った疑念を抱かせるミスリードをしかけている。

それにより、爆弾級の秘密を隠しおおせているあたりが
見事だなぁと素直に思った。
真相編で気持ち良く騙されたというか、まぁもともと
「黄泉人が誰か?」なんてあまり深く考えていなかったのだが。

女子高生失踪・死亡事件のほうはたぶん生身の人間による犯行
なんだろうなぁとおぼろげに思いつつも、犯人が誰なのか
積極的に考えようとしなかったので、壬生が正体を現した時点でも
「ふーん」くらいしか思わなかったな。

基本的に「死んだことを周囲に知られていない人物」しか
生者の中に紛れ込めないので、
実はこんなことがあって彼女は既に死んでいたのだという事実が
後出しじゃんけんみたいになってしまっていたのは
仕方のないところなのだろう。

舞美にとって音無姉弟は「遠い親戚」なのか「いとこ」なのか。
さすがに「いとこ」くらい近い親戚なら、死んだことくらい
耳に入ってくると思うのだが……痛ましい事故死だし。
ついでに言うならいくら疎遠でも、絶縁しているのでないなら
いとこの名前くらい覚えてるのではないかと。
それは主人公にも言えるか。
「叔父さん」は写真を見て、心底ゾッとしただろうなぁ。

陰気な主人公だけど、事故の前までは割と明るく愉快な奴だったのでは。
普段無気力なくせに、好きな女の子には結構積極的にいく姿勢は良い。
弟は姉の名を呼び捨て。
そして雪乃は弟にベタ甘ねーちゃん。
どんなにせがまれても、無免許の奴に運転させてはいけません。


バッドエンドの流れでは誰が犠牲になったのか語られない部分も
多々あるが、加害者は壬生なのか、黄泉人である雪乃か香織なのか
真相編を読んだ人にだけ判るような記述で、
もう少し判りやすくしてほしかった。
作中で黄泉人が黄泉落ちすると大量殺戮をはじめると語られるが、
そういった具体的なシーンがないから、
どうも黄泉人の危険さと禍々しさがピンとこないというか……

最初に見させられる強制ワーストエンドの加害者は、
壬生? 雪乃?
主人公の描写からではどちらともとれるので、
ああ、もやもやする。

そんななか、健介のアホっぷりと、大和のお調子者っぷりは
深刻な物語に楽しさのエッセンスを大いにぶち込んでくれていた。
明るい奴の存在はけっこう救いになるものだ。
スぺランカーネタとか、しれっと出てきて吹いたわ。