ノベルゲーム「結婚主義国家
読み応えバッチリ、なかなかの良作。
「刺激的な隠れた傑作!」と声を大にして言いたい。


ウォーターフェニックス×ケムコのノベルゲーム
「最悪なる災厄人間に捧ぐ(さささぐ)」ですが、
メインシナリオと別視点のシナリオを平行して再読し、
先日ようやく読了しました。

やっぱり引き込まれ、読了しても離れがたいお話でした……
二度目読みとなると伏線などが見えてきて、初読で「ん?」と
ひっかかった部分なども理解できたりして新鮮ですね。
先がわからない状態だと次々がしがし貪り読んでしまって、
初読で読み流していたシーンなどもあり、再読も充分楽しめました。

さてそんなウォーターフェニックスの世界観が気になってしまい、
前作である2作品にも手を出してみました。
いずれもandroid版アプリにてプレイ。


「一緒に行きましょう逝きましょう生きましょう」(←タイトル)

滅亡世界を二人で旅するノベルゲームで、
選択肢なしの一本道ストーリーとなっています。

選択肢ナシだと、ゲームじゃなくてゲームの形式で読む小説
のような気もしますが、では紙の本で読む小説と同じかというと
やはり違うし、私の中でジャンル分けに悩む部類の作品です。

それはともかく、やはり読了後の離れがたさがありましたね。
主人公鏡夜と、死に続ける少女アサギリの切ない旅路と
二人が辿り着いた結末を見てどう感じるかは人それぞれかと。
ネタバレになるので詳しく書けませんね。
ヒロインのみ全編ボイス入り。
少女のすごい絶叫が耳にこびりつくのは「さささぐ」と同じ。
あと「鏡夜」と「豹馬」って響きが似ているなぁと思いました。



「結婚主義国家」

18歳の時点で結婚できなかった者は処刑される国に生まれた男女の物語。
ウォーターフェニックスの作品だから読む気になりましたが、
知らないメーカーなら正直、
タイトルと設定を見ただけで、そっ閉じしてしまったかも(失礼)。

アプリ版は第1~4集とSS集があり、1,2は無料配信、3,4,SS は有料。
全部そろえるとアイコンが5つも並ぶので邪魔です(笑)。
それぞれ読み切りの短編ですが、
素直に第1集から読みはじめましょう。
短編のタイトルは、

独身監獄
単独結婚

脅迫恋愛
年齢制限

恋人死亡
儀式失敗

婚前監禁
変人縁談

ひとつのアプリに2話収録されています。
短編連作ノベルということで、1話がだいたい1時間くらいで読める感じ。
まとまった時間で一気に読みたくて休みの日に1~2話ずつ、
ゆっくりペースで読んでいたら読了するまで1か月程かかってしまいました。

第1集から、かなりクセのあるキャラが登場し、
なかなか刺激的なストーリー展開が待ち構えています。
初期段階で好き嫌いがハッキリ分かれそうな物語かも。
2話目のアイツとか第一印象から最低でロクデナシだし嫌んなっちゃうかもですが、
第1集で何かしらひっかかるものがあれば続きを読むことをおススメします。

男性視点で語られる物語はシリアスありコメディあり、それでも
ひとつ間違えれば死が待つ崖っぷちな恋の駆け引きにハラハラさせられます。

そして……8話分読み終えてからが本番と言っても良いでしょう。

これ以上の先入観もネタバレもなしで読んだ方がイイです。
SS(外伝ショートストーリー+α)はクリティカルなネタバレが含まれるので、
1~4集を「最後」まで読んでから開けるのがオススメです。
私は自爆してしまいましたが。
見た瞬間「ああああああ!」と叫んだよ(笑)。

 

公式サイト↓

http://water-phoenix.com/kekkon/

 

Windows版はこちら↓

https://dlsoft.dmm.com/detail/waterphx_0002/

 

 

 

 





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↓以下、ネタバレあり感想です! 
未読の方はご注意を。





第4集読了時点で(それともどこから読んでも全話読了しないと出現しない?)
全ての物語の続きとして「愛情試験」が出現するのは必然でしたよね。
やばいヒト雅文さん視点のまさかの長編。
しかもそれまで読んでいた短編に深々と彼が関わっているというか、
実はところどころ登場までしているという。
読んでいる時はまったく気づきませんでしたが、綺麗に騙されたのが心地良く。

雅文視点で語られてゆく短編の補完とその続きが、気になって気になって
貪るように読み進めてしまいました。
しかしこのアプリ、なぜかスマホがめっちゃ熱くなるうえ
バッテリーもガンガン消費するので一気に読めず辟易しました。
読める環境にあるならWindows版を利用したほうがいいかもです。


「独身監獄」
裕福な立場の者が人間が足掻いて死んでゆくさまを見て楽しむ、
というえげつない設定自体は、割と昔から見るネタではありますが、
昴と桔梗の話はけっこう心をえぐりにきました。
看守おまえが雅文だったのか! もうひとりの看守は悪役として
最後まで強烈なインパクトがあったのに名無しのままで残念。
昴と桔梗が辿った運命が物語全体や結末に影響を及ぼしていく流れが
一種の怨念というか呪いのようにも思えました……

「単独結婚」
ひたすら「雅文こえーよやばいよこいつ」と思いながら読みました。
一人称視点の文章は普段、その人物に感情移入しつつ読みますが
こればかりはさすがに引いてしまいましたねぇ。
葬式で号泣する洋一さんの兄馬鹿ぶりがかわいいというと不謹慎?

「脅迫恋愛」
巨大なオレンジに吹きました。
クールツンデレな椿さんがひたすらかわいい。
椿一筋になっていいように操られる聖也もかわいい。
愛情試験でもさまざまな活躍をしてくれて、
見ていて楽しいカップルになりました。

「年齢制限」
「恋人死亡」
「儀式失敗」
この3作は「愛情試験」を読み終えてから再読すると更に深みが増しそう。
雛菊と信治の物語はドラマチックだったはずなのですが、
二人の逃避行が「愛情試験」のいちエピソードに組み込まれてしまって、
ドラマに次ぐドラマに埋もれていまひとつ印象が薄くなっているのが残念。
雅文の同僚さん、とてつもなくイイ味を出しているキャラですが、
これまた名前がないままでもったいないなと思いました。

「婚前監禁」
前半は小百合がひたすら怖いけど、後半は思いがけない苛烈な展開に。
どうして物語の登場人物って時折取り返しのつかない選択をしてしまうのか……
物語が終わっても、全ての人が幸せになれないのがリアルで切ない。
のちのち明斗と関わってくる昴の元カノ。
クズ中のクズだなと思っていましたが後悔しているだけマシでしたね。

「変人縁談」
これ小百合の話のあとにくるから落差が激しすぎて乾いた笑いが出る。
結局ガーベラさんの本名は判らずじまい。というか夫も知らないままか?
ヘンなカップルですが幸せそうだからもういいです。
さすがの雅文さんも理解に苦しんでいるので、ますますおかしい。


これらすべてのエピソードを経て、
雅文さんが人間失格男から娘の桜を守る親へと劇的変化を遂げる姿は
深く、そしてすがすがしいものがありました。
結婚式場で鐘を鳴らし大演説を繰り広げるも失敗、娘と離れ離れにされて
暗黒画面でスタッフロールって、そのタイミングは凶悪でしたね~。
こっちまで絶望的な気分になったわ。
そのぶん、最終章の存在が強いのですけれども!

独身監獄へ乗り込み、昴と桔梗が辿った道を駆け抜けて、
もうダメだーってところで、洋一さんがピンチ救済役という
おいしいとこ全部取っていくのも素敵すぎて見事(笑)。

しかし、この狂った制度が世論で変化する国だと思っていなかったので
あっさり崩壊したのは少々意外でした。

とはいえ、読後感はとても心地よいものでした。
素晴らしい作品をありがとうございました。

次回作も楽しみですね。