実際に萩に向けて出発するのは明後日であるが、その前に新潟の娘の所に泊まろうと思う。列車での旅は新潟から新山口までである。まず新潟からは特急「しらゆき」で上越妙高へ。そこから北陸新幹線で金沢経由で敦賀へ。敦賀から京都までは特急の「サンダーバード」。京都から新山口までは東海道・山陽新幹線ということになる。新山口からは迎えの車で萩へという行程である。

 わざわざ日本海側から向かうのは、そこに広がる海を眺めたいからである。昨年も同じ頃に越前までの車で出かけたが、今の時期の日本海はやさしい。冬のような淋しさはない。柏崎を過ぎたあたりから海が迫ってくる。中野重治が愛した丸岡城を、今回は目にすることができるだろうか。琵琶湖が目の前に見えてきて近江に入るのも圧巻である。

 新山口は萩市と防府市を結ぶ往還道の終点である三田尻港近くに位置する。往還道は山陰と山陽を結ぶ重要な交通路で、それこそ吉田松陰が往来した道路であり、山間の地に集落が点在しているが、一戸一戸が独立した風格を備えている。

 70を過ぎてもまだ仕事に追われている僕にとっては、講演をしに出掛けるとはいっても、ある種の息抜きである。車窓からの景色を楽しみたいと思う。