小泉進次郎では役者不足であった。このままでは、自民党総裁選では高市早苗さんと石破茂が決選投票になりそうな情勢である。それにしても、キングメーカーになろうとした菅義偉は、とんでもない思い違いをしたものだ。

 マルクスには『ルイ・ポナパルトのブリュメール十八日』という有名な書がある。ナポレオン・ポナパルトが1799年革命暦十一月にクーデターを決行し、革命を終わらせ権力を掌握したことを悲劇と見た。その甥であるルイ・ポナパルトもまた、1851年12月2日、クーデターで共和制を流産させ、ナポレオン3世となって独裁者となったが、そちらは「茶番」であるとし、厳しく断罪したのである。

 そこまでのスケールの歴史的出来事ではないが、小泉純一郎の聖域なき構造改革は、日本を破壊してしまった。その息子の進次郎が「決着」を付けるとして、自民党総裁選に出馬した。二番煎じで国民を騙そうとしたのだ。しかし、レベルの低い茶番を演じる前に脱落することがほぼ確実視されている。国民は愚かではないのである。

「皇帝マントがルイ・ポナパルトの肩におちかかるときには、ナポレオンの銅像はヴァんドーム柱のてっぺんからころげおちるだろう」(伊藤新一・北条元一訳)という様子を目撃せずに済みそうだ。「世界史的な大事件や大人物はいわば二度あらわれるものだ」とマルクスは、ヘーゲルの言葉を引用しているが、大人物ではない、小人物であっても同じであり、過ちを繰り返してはならないのである。