昨日のつばさの党による選挙妨害を見て、法に触れるかどうかは別にして、国家機能が低下する「超帝国」の時代には、あのような光景が日常茶飯事になるのだろう。
 その前兆を私たちは今、目撃しているのではないだろうか。大方の日本国民は眉を顰めるとしても、下層ノモド(現代の遊牧民)と呼ばれる人たちは、暴力的行為に共感しているはずだ。憂うべき世界がすぐそこまできているのだ。
 まさしく、ジャック・アタリが『21世紀の歴史』(林昌宏訳)で予言した通りなのである。これに対抗するには、国家が毅然たる対応をしなければならないが、警察力や軍隊の力では手に負えなくなり、民間警察が必要になってくるのだろうか。
 これは個人レベルにとどまらず、国家レベルにも波及する。アタリは「中国はなんらかの形で台湾を統合し、十九世紀にアメリカがアメリカ大陸を支配したように、東アジアに中華圏を確立しようと模索する。中国は、日本そしてアメリカまでも飲み込もうとする。まず中国は韓国を拠り所とする。その結果、韓国は軍拡を余儀なくされ、北朝鮮の軍事政権の存続を許してしまう。北朝鮮も防衛手段として核兵器を含め、新たな軍備を配置する。そこで今度は、日本は朝鮮半島の脅威ならびに中国の台頭に対抗するため、再軍備を図る」と書いていた。
 2006年に北朝鮮が核実験を行う前に、アタリを北朝鮮の核保有を明言していたのだ。日本も軍備を強化せざるを得なくなっている。戦争と暴力に明け暮れる超帝国ではなく、「市場民主主義をベースとした利他愛に基づく人類の新たな境地」を目指すことをアタリは説いてるが、それが本当に実現できるかは疑問である。しかし、私たちが混乱と混沌の世界に足を踏み入れつつあることだけは確かなのである。