僕にとって本を読むことは息抜きです。リフレッシュできるからです。散歩をしているような気分になるからです。しかし、ベストセラーになっているような本ではありません。ともすれば敬遠されがちな古典を読むことで、何か大切なものに触れたような気がします。何度も読み返すのは哲学書や宗教書です。
そんなことをしても、金儲けにもならないし、人から評価されるわけではありません。あくまでも無償の行為です。老いた今となっては、なおさらその思いを強くします。
神谷恵美子に「生きがいを求めて」(『旅の手帖より エッセイ集1』)という一文があります。兵庫県立伊丹高等学校で講演・座談会の記録です。
神谷が高校生との座談会で語った言葉は腑に落ちます。彼女は「逃げ道を作るために生きるのではない。生きるためには、逃げ道が必要なのです。私の過去をふりかえってみても、生活の重圧の中で、一日30分でも、実利のためではなく生きてゆく時間があったからこそ、生きてゆくことが出来たのだとうなずくことができます」といっています。
どんな人間でもあろうとも、日々の生活に追われて暮らしています。現実の世界から離れる習慣を持つことで、人生をリフレッシュできるのです。
神谷の「ちょうど私どもの肉体が睡眠をとらなければ生きてゆけないように、精神もまた、休ませ遊ばせ勇気づけることが必要なのです。そのための精神の糧が学問や芸術であるといってよいでしょう」との言葉は、まさしくその通りではないでしょうか。
