世界の知性が再確認するまでもなく。我が国は核武装をせざるを得ない状況下に追い詰められています。また、日本が大衆迎合主義に陥らない、独自の文化的な一体感があることも教えてくれます。それが朝日新聞出版が先月発刊した『人類の終着点 戦争、AI 、ヒューマニティの未来』なのです。

 出版元が朝日新聞であっても、もはや現実から誰も目を背けることはできなくなっているからです。そこでは、エマニュエル・トッド、マルクス・ガブリエル、フランシス・フクヤマにインタビューをしています。

 そこで注目されるのは、アメリカへの信頼が揺らいでいることを三者とも認め、トッドは「同盟国であるアメリカは安全でなくなっており、不安定である。だから軍事的安全保障をアメリカに依存することはリスクである、と。そして、日本が安全だと感じるには核爆弾を手に入れる以外に方法はないということです。核爆弾を持つことで、世界の紛争には参加しないという選択肢を持つことができるからです」と言い切ったことです。

 また、フクヤマも「アジアのパワーバランスは変化しています。新たな脅威が生まれており、それには経済的な力だけではなく、軍事戦略的な力も必要です。そのゆな役割を担うのかどうか、日本派決断しないといけません」と述べるとともに、「ウクライナへの信仰を見れば、軍事力というのは、今でもグローバル政治において重要な要素なので会う。ですから、そのような世界で日本の果たすべき役割を真剣に検討すべきでしょう」と提言しています。

 ガブリエルは、安全保障については直接言及しないものの、世界的な危機を乗り越える希望を、日本に見出そうとしています。「日本の独自の近代性に、一つの大きな利点がありまう。日本では、一定のコストがかかったとしても、驚くほど高い水準の平等を実現しようとしています。そして、経済成長までしています。とくに、資源の分配に関しては、常に良い状態です」と評価し、「言語も日本のアドバンテージになるでしょう。子どもの頃に日本語を学んで、日本語を母国語として読み書きするので、何百年もの歴史と文化が、日常会話の中にコード化されています。これはすべてを硬直化させ、不自由にすることもあります」と念を押しつつも、「一方で、儀礼的な習慣を信じられないほどの回数を繰り返すことによって、ある種の高度な自由を実現しているのです」との見方をしています。

 最後の章に岩間陽子政策研究大学院教授や、中島隆博東京大学教授の対談が掲載されていますが、この三人の言い分を正当に評価できず、朝日新聞流の言い方に終始しているのは、意味のない蛇足でしかありません。