この僕ですら、これまで23冊ほどを世に出していますが、もっとも愛着があるのは、峰たけしのペンネームで出した『憂国の言葉』です。
13年以上も前のことになりますが、わずか126頁の新書版です。「第一章保守の言葉」「第二章革命家の言葉」「第三章江戸思想家の言葉」「第四章貧しき者の言葉」「第五章逆境の言葉」から構成されています。
その序文で僕は「右だとか左だとかは、どうでもよいのです。僕の心を揺さぶったかどうかが問題なのです。アカデミックな研究家とは違って、僕は一ファンに過ぎません。惚れた相手なので、とことん美化することになっても、どっとみち許されるのではないでしょうか。それで僕が癒されるのであれば」と書いています。
そこでは、三島由紀夫の「あらゆる制度は、否定形においてはじめて純粋性を得る。そして純粋性のダイナミズムとは、つねに永久革命の形態をとる。すなわち日本天皇制における永久的革命的性格を担うものこそ、天皇信仰なのである」(『英霊の聲』)、保田與重郎の「今日における浪漫主義文学の見識は、共産主義とアメリカニズムを排斥することにある」(『天の夕顔』解説文)、柳田国男の「死んでも死んでも同じ国土を離れず、しかも故郷の山の高みから永く子孫の生業を守り、その繁栄と勤勉とを顧念して居るものと考え出したことは、いつの世の文化の所産であるかは知らず、限りもなくなつかしいことである」(「魂の行方」)といった文章を紹介しています。
その一方では、竹内好、鶴見俊輔、黒田寛一、吉本隆明、梅本克己なども取り上げており、あくまでも僕の好みにほかなりません。
いずれもそれなりの解説文を付けていますが、そのときから僕は大して進歩しているとは思えません。もし機会があれば、お読みになることをお勧めします。今でもアマゾンで購入できるはずですから。
