岸田文雄首相が高市早苗政調会長を経済安全保障担当相に起用したのは、保守派ネット民の声が官邸を動かしたからである。その一方でハニトラ疑惑の林芳正外相を留任させたことは、岸田首相の中途半端さを印象付けることになった。浜田靖一元防衛相の再起用は無難な人事だと思う。今回の焦点は高市政調会長の扱いであった。無役にになるようなことがあれば、保守派が自民党から離れる可能性もあった。組閣の最終局面になって、それを恐れた官邸が軌道修正をしたのではないだろうか。

 政界のことは一寸先が闇であり、今後どのような展開になるかは予断を許さないが、宏池会内閣をつくることを当面あきらめて、東アジアの危機に対処せざるを得なかったのだろう。それなりに軟着陸はしたが、林外相については、それこそ疑惑が深まれば、かばうことは難しくなるのではないだろうか。

 しかし、一応は評価できる組閣であったとしても、岸田内閣の安全保障政策と経済政策については、不安感を払しょくすることはできない。中国による台湾侵略は確実に迫っており、尖閣諸島や先島諸島の緊張感は筆舌に尽くしがたい。防衛費の2%というのは、前倒しをして達成しなければならないが、岸田首相にやる気があるのだろうか。需要と供給のアンバランスが30兆円近くあるといわれながらも、たかだか2兆円の補正で済ませているのも問題である。中小零細企業への給付金も、菅義偉前首相のときとは違って財務省の言いなりである。このまま緊縮路線に舵を切れば、雇用も失われ、深刻な事態になることは目に見えている。

 経済安全保障の分野というのは、高市政調会長の得意分野ではあるが、目の前の危機に対応できるポストではない。外相や防衛相に就任するのがベストではあったが、次期首相の目が残った意味は大きい。これまで以上に私たちは、自民党保守派を応援すべきだろう。さらに、次のステージを考えれば、自民党保守派と国民民主党などによる政権樹立に向けての新しい動きを加速させるべきだろう。責任ある政治が、今ほど求められている時代はないからである。