岸田首相の勇気ある決断を支持したい。安倍元首相の国葬を秋にも行うことは本決まりになったほか、この冬にも原発を9基稼働させる方針を明確にしたからだ。死せる安倍晋三元首相が生ける岸田首相を走らせたのである。
 岸田首相はよく宏池会という派閥名を口にする。池田勇人が旗揚げしたのが宏池会であり、その名付け親は、日本主義思想家の安岡正篤であった。昭和天皇の「終戦の詔勅」が発せられると、池田勇人と前尾繁三郎は、皇居前に行き、官吏の責務を果たし得なかったことを、天皇におわび申し上げたといわれる。林房雄の『随筆池田勇人』ばかりでなく、沢木耕太郎の『危機の宰相』でも触れられている。戦後民主主義が徹底する以前は、官僚にとっては、天皇は絶対的な存在であった。御多分に漏れず、池田もまたその一人なのである。
 宏池会が親中派と呼ばれるようになったのは、大平正芳が田中角栄の盟友となり、外務大臣として、中国との関係強化に前のめりになってからだ。池田は大衆迎合的な発言をしたわけではなく、逆に「貧乏人は麦を食え」と放言したとして、マスコミの叩かれたのである。しかし、所得倍増を実現させて、日本の黄金時代を築くことになったのである。
 岸田首相は池田の愛国の精神と、所得倍増を達成させて手腕に学ぶべきだろう。池田も言っていたように、少しは荒っぽくても、国民のためになると思ったならば、突っ走るしかないのである。当面の最大の課題は憲法改正であるが、臆せず先頭に立つべきなのである。安倍元首相の霊を弔うためにも。