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 大先輩の編集者から譲り受けた蔵書のなかに『ブンド書記長島成郎を読む』があった。ブンド(共産主義者同盟)の中心人物として名を馳せた島は、何を考えどのように生きたのだろうか。六十年安保を全学連主流派として闘った彼らからすれば、僕などは七十年安保世代であり、一世代後にあたる。

 その本は島が書き残したノートなどが中心で、それ以外は島を知る関係者の追悼文であった。島はブンド解体後は精神科医として生業を得たが、そのノートに書かれているのは、一人の若者の葛藤の記録であり、革命家としての思想が語られているわけではない。正義を信じて立ち上がった若者が、どのように傷ついていったかがよく分かる。

 追悼文の中でひときわ正鵠を得ていると思ったのは、筆名姫岡玲治として知られた、ブンドの思想的リーダー青木昌彦の「ブンドが目指したもの」である。

「ただ、ずーっと確かにいえたことは、安保闘争の前に左翼の中にあった権威主義を軽蔑し、憎悪し、それを破壊するといった熱情をブンドのメンバーが共有していたことです。そして古びた権威が崩れてしまえば、それを新しい権威でおきかえることは論外ですから、安保が終わってみると、皆が一人ひとりで自分の納得する道を求めるべくバラバラになったということも当然だったといえるでしょう」 

 ブンドが敵として想定したのは、当時の学術会や言論界を握っていた、進歩的文化人やスターリン主義に毒された日本共産党だったのである。僕がブンドを高く評価するのはその点においであり、自由な言論を取り戻すための、まさしく一里塚となる闘いであったのである。

1人、本、テキストの画像のようです