ワンダフルライフ
清原なつの
早川書房 ハヤカワ文庫JA
全1巻
発行日 2004/1/10

 

漫画家が登場する漫画は珍しくはないが、母が漫画家(氏名、山田錦)、父が宇宙人(地球での氏名、天下太平)という設定は、おそらく他にはないだろう。

 

娘のみずほは小学生。学校の作文の課題で、「両親の出会い」について書こうと2人のなれそめをきくが、それはそれはとんでもなく恥ずかしい出来事だった。

 

ある日、太平は酒に酔いへべれけになっていて、かつ全裸で道に倒れていた。脱ぎ散らかした服はすぐ傍に落ちている。このままでは命にかかわると、はこれらの服を回収し、太平を背負って家に連れ帰る。これが2人の衝撃的な出会いである。

 

太平の表向きの仕事はサラリーマンだが、地球の平和を守るため、事故が起こったときの救出活動や、事故が起こりそうなときの予防活動などが宇宙人としての使命である。この地球上にはこうした宇宙人が人知れず活動しているのだ。

 

あ~、そうか、この作品はSFなのか。清原先生はSF作品も時々書いておられるからなあ。アレックスタイムトラベルなんて大好きな作品もある。アレックスはシリアスだが、こちらはコメディというかスラップスティックというか、う~ん、ギャグ?

 

人知れず活躍するこの宇宙人たちは、地球上で宇宙人パワーを使うと、身体の代謝の関係で体内にアルコールを生成してしまい、へべれけになってしまうのである。なんという設定!

 

両親のことを隠し立てするのは良くないと、みずほは作文を発表してしまう。こうしてみずほの父が宇宙人であることは巷に広がる。だがなぜか、周囲はそれを受け入れてしまうのである。

 

どこか変なこの物語、主要な登場人物は全て変である。

みずほの担任、可奈子先生はいつも派手な服装をしており、婚約者あらダイヤモンドをプレゼントされたからと、ダイヤモンドに関する特別授業をしてしまう。ダイヤモンドの構造、ダイヤモンドの歴史、ダイヤモンドの贈り方、ダイヤモンドの貰い方……。

 

変な登場人物はどんどん増えてゆく。

太平の父親の宇宙人が居候でやってきたり、太平の父の妻は浮気の腹いせに冷凍睡眠で若さを保ち、太平の姉としてやってくる。

 

の担当編集者が交代したかと思うと、「漫画を売るためにサブリミナル効果を使いましょう」などと提案してくる。コマとコマの間の隙間に、「おもしろいぞ~」とか「コミックス買うぞ~」とか書きこむことだと勘違いしただが、実際にそれを作品の中でやったのは清原先生ご本人だった。

 

そんなわけで、必ずしも平穏とは言えないながら、地球の平穏を守るため、天下一家は今日もどこかズレた感覚で、笑いを醸し出してくれるのである。

 

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