大将軍のシャトーブリアン(長野県松本市)
子供の頃、肉が苦手だった。
正確に言うといわゆる『ステーキ』が苦手だった。
『ステーキ』を生まれて初めて喰らった時のことを今でもよく覚えている。
8歳の誕生日、家族四人普段しないおめかしをして、東銀座、歌舞伎座の裏手にあるチャコというステーキレストランに。
美味しい肉を食べさせてやる!と嬉しそうな父。
焼き加減はミディアムレアで、と母。
いつもと違う両親の振る舞いに戸惑いながらも目の前のサーロインステーキに噛り付いた。
一口目の旨さ、モニュっとした初めての食感に興奮した。
でも、半分食べたくらいで胸焼けが…
子供には脂身が堪えた。
それでも自分のためにと奮発してくれた両親に申し訳なく、全て平らげた。
平らげたけど、すぐに全てをリバース…。
あの時の父の悲しそうな顔が忘れられない。
親になってあの時の父の切なさが痛いほど分かる。
それ以来、ステーキが苦手になった。
大将軍のシャトーブリアンを前に、ふとそんな苦い思い出がよぎった。
サシが綺麗に入った、見るからに焼いても柔らかいだろう肉の塊。
焼いてもやっぱり柔らかく、甘く、そして美味さだけを残し、舌の上で溶けるように無くなった。
セガレに喰わしてやりたいなぁ、これ。
と、思うも、8歳の自分が現れたので親心を引っ込めた。
こんなにも美味い肉は美味いと感じる歳になったら存分に喰らえば良い。
フカヒレって肉も、他の肉もシャトーブリアンに負けず劣らず美味かった。
いつか大人になったセガレと二人で肉を喰らおう。
大将軍でこのシャトーブリアンを喰らおう。
ごちそうさまでした。
サンキュー。。。
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