朝食の前に荷物を車に積み込み、食後7時半には出発だ。

今日は、とにかく北上する。目指すは、日本海! 太平洋側からの縦断である。

 

最初に向かったのは、『史跡・生野銀山』、室町時代から昭和まで、採掘がつづいた日本有数の銀山だ。

 

山中に散見する江戸時代の古い坑道から、近代の機械化された採掘跡まで見学して回る。

鉱物や廃墟が好きな美猫姫は興奮気味だ。写真を撮っていて、なかなか先に進めない。

美猫姫好みの場所だとは思っていたけれど、これほど喜んでくれると、連れてきたかいもあると云うものだ。

 

本当は、この後『神子畑選鉱場跡』を見に行きたかったが、雨が強くなってきたので断念。次を目指すことにした。

 

途中、道の駅に併設のレストランで、ランチを済ませ、湯村温泉も通過、今回の旅行の最大目的地へ。

 

新温泉町浜坂にある『加藤文太郎記念図書館』だ。

 

もちろん図書館を利用するために訪れたわけではない。目的は、2階にある「加藤文太郎記念展示室」と「山岳図書閲覧室」である。

 

加藤文太郎とは何者か?

大正から昭和にかけて活躍した登山家である。単独行を好んだことで有名だ。神戸で仕事についていたため、六甲山脈を徒歩で越え、この浜坂に帰省したと伝わっている。

 

彼を主人公とした小説を新田次郎が書いている。『孤高の人』だ。

夫NG、この小説を読んで感銘を受け、高校時代から山に登るようになった。大学時代はもちろん、就職してからも休みの度に登っていたらしい。大学は林学科を選んだし、山小屋の番人をしていたこともあるとか。遭難者の遺体を背負って下山したこともあるそうだ。

 

自身、山で死を覚悟したことも何度かあるらしく、結婚と同時に登山を止めた。当時、「自分の家族を持つことに決めたのに、趣味に命をかけてはいけない」と云っていた。

 

だから、今回の旅は神戸→浜坂でなければならなかったのだ。

 

そして、どうしても今年行きたかった理由は、今年ぶんぶん丸が二十歳になったから。これがどう関係するかは、ご想像にお任せする。

 

芳名帳に足跡を残して次に行こう。

 

雨の中向かったのは、『浜坂先人記念館 以命亭』。大きな古い屋敷を、のんびりと見て回る。

 

雨は本降り、止みそうにない。宿に向かうことにした。浜坂港を見下ろす立地の『浜坂温泉魚と屋』である。

 

雨に振り込められて宿でのんびり。たまにはそんな旅もいい。温泉三昧、魚三昧。