もうすぐ日にちが変わってしまうから、作業を中断して寝ようと思った。
そして、寝る前に、トイレに行っておこうと……。
階段前の廊下に立っていると、「チチッ、チチッ」と、小さな音がした。時計のアラームに似ているが2~3度鳴って、止まってしまった。耳を澄ますも、誰かが動いた気配はなく、誰かが止めたとも思われない。目覚まし時計ではないということだろうか?
音は、ぶんぶん丸の寝室からだったような……。
その話を翌日家族にすると、みなが首をかしげた。
「ぼくは、そんな時間にアラームは鳴らしませんよ」
ぶんぶん丸からは、想像通りの答えが返ってきた。
「ぶんぶんの部屋からではなく、階下からってことはないのか? ファックスなんじゃないか?」
父親NGが云った。sei-sei家、1週間ほど前にファックス電話を買い替えたばかりなのである。
「それは違うと思う」
美猫姫が云った。
「ずっと前からだから」
美猫姫が云うには、昨夜に限ったことではなく、たびたび深夜にアラームが鳴っているらしい。それも年単位で昔から。
「毎晩かどうかはわからない。わたしも気がつく晩と、寝てしまっていて、鳴ったかどうかわからない日もあるから」
そんなこんなで、sei-sei、深夜0時まで起きていて、音の正体を突き止めることにした。
0時少し前に廊下に出る。アラームの音は短い。
音は確かにぶんぶん丸の部屋の中からと思われた。方角は、机の上か?
しかし、そこで音は途絶えた。暗闇の中、手探りで、机の上を探ると、「腕時計?」。
G-shockなのか!?
この腕時計、ぶんぶん丸の高校入学祝いに買い与えたものである。丸っと、5年前のことだ。
5年間、気づかなかった? 本当にそんなことがあるのか?
翌朝調べてみると、確かにこの腕時計、アラーム機能がついていた。
「でも、ぼく使っていませんよ。アラームがついていることを知りませんでした」
ぶんぶん丸は困惑顔だ。
そして、アラーム機能とは別に「時報機能」もあったのだ。出荷されたときの初期設定のまま、深夜0時に、この5年間鳴りつづけていたものと思われる。
「オフにしておくぞ」
父親NGがネットで調べて、時報機能を停止してくれた。
それにしても、5年間気づかないって、どうなのよ、sei-sei家。