「ずいぶん髪が伸びたねぇ~。美容院行かないの?」
美猫姫に声をかけた。
「行きたいとは思っているんだけどねぇ」
「どうしたの? それくらいのお小遣いは、持っているでしょ?」
美猫姫、決まり悪そうな顔をした。
「電話以外に、予約の方法ないのかな?」
「あそこの美容院はないと思うよ」
ネットで予約ができるか調べてみる。
「やっぱりないねぇ~」
「お母さん、予約の電話、代わりにしてくれない?」
美猫姫、どうやら、電話をするのが嫌だったようで……。
彼女は、会社勤めしていたとき、電話番が重荷で、心身を病んだのだ。
以前は、予約の電話、自分でしていたんだけどなぁ~。社会人一年目に負った傷は、浅くはないようだ。
当分引きずることだろう。
彼女が生きやすくなるのなら、予約の電話くらい、代行してやることにしよう。