郵便局から帰ってくると、夫NGがスマートフォンで話し込んでいた。
ときおり敬語になるが、それなりに親しそうな口調だ。相手は誰?
発達障害、療育、精神科、グループ・ホーム、きょうだい、そんな単語が漏れ聞こえてくる。
「会社の部下だよ。子どもに診断が出たらしい」
夫NGは、ただ今無職だ。「以前の会社の元部下」ということだろう。
NG、退職したすぐは、頻繁に電話がかかってきた。そのたびに、相談に乗っていた。こちらは「業務」についてだったようである。引継ぎをして退社したが、不安になると電話してくる人間がいたようで……。
そして今日は退社して1月半、我が家に自閉ちゃんがいることを知っての、個人的な相談事だったようである。
NG、まるで「よろず相談室」。
「また電話して来いよ。相談に乗るから」
そんなことを云って電話を切っていた。
「カミさんは大変だろうけど、父親の方も、ああやって必死に情報を集めて、カミさんの力になろうとしているから、たぶん大丈夫だろ」
確かに、辞めた元上司にまで電話してきているのだから、その必死さは本物だろう。
「でも、こんな時間に電話してきてよかったのかな?」
「あぁ、あいつは在宅勤務だから」
「てことは、一応、勤務時間中だよね……」
そして、NGが今だ無職だと踏んでるってことだよね???