私はアメリカン・バイクは嫌いです。
その理由は論理的なものではなく、感情的なものです。
以前書いた様に、子供のころ、私は父に半ば強引にツーリングに
つき合わされました。
特に夏は毎週の様に三浦半島に出かけました。
休憩場所も決まっており、父が特に好きだったのは横須賀の米軍港が
一望に見渡せる横須賀駅前広場でした。
考える事は洋の東西を問わず同じだと見えて米国ライダーが何人も
たむろしていました。
最初の内こそお互いに無視していましたが、毎週顔を合わせるので
いつの間にか、父は片言の英語でやりとりする様になりました。
私も中学1年なっていたので話してみろと言われましたが、
カチカチになって何も言えませんでした。
その時のバツの悪さは今だ持って引き摺っています。
ただ、その時に見たハンド・チェンジの巨大なバイクと米国人ライダーが
口にしていたナックル・ヘッドと言う言葉が妙に印象に残りました。
「・・・頭?」いったい何の事だろう。
俺が石頭ってことか?
当時、バイクといったら身近にある国産車、(それも大半は実用車)しか
知らなかった私には知るべくもありませんでした。
しかし、さすがに今はそれが何を意味するのか判ります。
ナックル・ヘッドはハーレー・ダビットソンの長い歴史の中で取り分け、
重要な意味を持つ型だったのです。
1936年、ハーレーのエンジンはそれまでのS・VからOHVに変りました。
当時流入して来ていた英国車がOHVの高性能車だったためです。
ご覧の通り、S・Vエンジンの燃焼室は歪で燃焼効率が悪く、
給排気の流れもスムーズではありませんでした。
この点を改良したのがナックル・ヘッドだったのです。
ハーレー・ダビットソン EL ( 1941年式 OHV 侠角Vツイン 998cc )
1936年ころのナックル・ヘッドの性能は1000ccで40ps/4500rpm位
でした。
1940年ころにはナックル・ヘッドは1200cc、48ps/5500rpm位になって
いました。
ハーレー・ダビットソン FL ( 1946年式 OHV 侠角Vツイン 1200cc )
ハーレー・ダビットソン FL ( 1947年式 OHV 侠角Vツイン 1200cc )
この時代のハーレーは英国車がハンド・クラッチ、レッグ・チェンジ゙だった
のに対し、反対のレッグ・クラッチ、ハンド・チェンジでした。
このことから私が出合ったハーレーはこの時代の物と思われます。
塗装はここに取り上げた写真のバイクよりもっと派手だった記憶があります。
( 確か、赤のバイクの他に空色のバイクもありました。 )
S・Vのフラット・ヘッドに比べ、OHVのナックル・ヘッドの性能は
2倍近く勝れていたそうです。
米国人ライダーが誇らしげにナックル・ヘッドと言っていたのは、
フラット・ヘッドから大きく進歩したハーレーの性能に自信を持っていたから
だったのです。
バイク・ブログ 「峰風」とともに
はこちらから