「先生、ちょっと、堅物なお父さんなんですが、奥様が、寝たきりで、口腔ケアを、希望されてます。」
訪問看護ステーションからの依頼でした。
70代のご夫婦で、老老介護のお宅でした。
奥さまは、多発性の脳梗塞で、手も、足も体もほとんど動かない状態で、失語症もありました。
始めてお宅に伺った時、一緒に行ったスタッフは、お父さんのお母さんを思う気持に感動し、涙したほどです。
慣れない、介護を、お父さんは、一生懸命にしていらっしゃいました。
胃漏での、食事なのですが、お父さんは、必ずお母さんの為に、いろいろなものをミキサーにかけて、
食べさせていました。たとえば、コーンスープ、煮豆、アップルパイ、なんでも、ミキサーにかけました。
「おかあさん!おいしかったら、目、パチッ。」
お父さんと、お母さんの合図です。
ほとんど、動かない体なのですが、瞬きだけは出来ました。
お母さんは、いつも、穏やかです。
お話し好きのお父さんを、目を細めて見ているという感じです。
そんな、お母さんに、お口から、もっと、食べれるようにしてあげたいと、お父さんは思っていらしゃいました。
お母さんのお口の周りの筋肉は硬くなってしまっていたので、ほぐすのが大変でした。
週に一回のマッサージでは、なかなか、思うようにいきませんでした。
マッサージも、結構力が入りました。
「おかあさん!痛くないか?痛かったら目パチッ!」
お母さんに、いろいろ聞いてくれるのもお父さんです。
いつも、どの場面でも、お父さんの優しさがみえました。
体が動かないので、着替えがとても大変です。
病院の検診に行く時の服は、おとうさんが、りホームしていました。
「おかあさん、この、気に入っていたスーツ切っていいかい?」
元気なころに、着ていたスーツも、コートも、ブラウスも、カーデガンも全部お父さんの手づくりリホームです。
前あきの服がほとんどなのですが、前は、縫ってしまいます。
後ろ身頃の真ん中にハサミを入れて、マジックテープで留めるという方法です。
「お母さん!これを着てると、寝たきりには見えないんだよね。素敵ですねって、みんなに言われるよねー。」
ほんとうに、素敵なのです。
お父さんの裁縫ですから、細かい所は、、、、でも、とても、上手に縫ってあります。
あたし、この方法紹介したいな。なんて、言ったこともあるくらいです。
お父さんは、車が大好きです。
「レクサスでも買おうかな。なんて思ったけど、お母さんにわるいしなあぁ。」
「だから、キャンピングカーにしようと思うんだ。お母さんのベッドを入れて、胃漏が、出来るようにすればいいし、おれは、なにが食べたいわけじゃないから、酒とつまみががあれば一杯すればいいし、どこでも、止めて寝れるからなあ。伊豆に、車いすでもはいれる温泉もあるんだよなあ。」
「この間、幕張まで、お母さんとキャンピングカーを、見に行ったんだよ。」
とても、楽しそうに話していました。
突然、ケアマネージャから、連絡きました。
お父さんは、癌が見つかって、入院したということ、お母さんも、介護施設の病院に入院しているとのこと。
訪問治療は中断してしまいました。
それから、半年ぐらいでしょうか、お父さんが、亡くなったという連絡を受けました。
お父さんが、亡くなってから、キャンピングカーが、出来てきました。
あんなに、お母さんと一緒に旅行に出かけるのを楽しみにしていたのに。です。
本当に、本当に残念です。
私たちは、お父さんにいろいろなことを教えていただきました。
夫婦としての、ありかた。やさしさ。思いやり。。。。。
本当に、ありがとうございました。
お母さんの介護は、お仕事を辞められて、お嬢さんが今、していらしゃいます。
私たちもまた、訪問治療を始めさせていただいています。
おとうさん!大丈夫です。やさしくマッサージしています。