脳神経外科で脳卒中リハビリテーションのエキスパート、酒向正春(さこう・まさはる)さんが筋肉を鍛え、心を整えて95歳までの健康寿命を実現する「サコーメソッド」を提唱している。
「筋肉革命95](日刊現代)にまとめ、年齢より20歳若い筋肉を維持することで、80歳で8割が豊かに就労できる健康長寿社会を実現したいと、高齢化が進むなか全国での普及に意欲を見せている。
酒向さんは脳梗塞で倒れた長嶋茂雄さんのリハビリを2004年から約8年間サポートした。
回復に向けて厳しいリハビリに挑む長嶋さんの姿が「筋肉革命95」の考え方につながっている。
健康長寿の平均は男性が72.57歳、女性は75.45歳(2022年、厚生労働省調べ)、平均寿命との差は男女とも10年前後あり、人生100年時代には健康ではない期間がさらに長期化する恐れがある。
脳卒中や認知症、加齢による衰弱、予防のためには健康な筋肉状態が健康な脳機能と連関する「脳筋連携」が重要だと指摘する。
筋肉量を増やせば筋力と体力が増加し、糖尿病や高血圧などの生活習慣病も予防できるし、転倒しにくい体づくりに繋がり、骨祖しょう症や変形性関節症の予防にもつながる。
その結果、社会参加や学びの機会も増えて、脳機能が活性化され、筋肉を鍛えることで体調を良好に保つホルモンなどが分泌されるという。
脳筋連携を促進する方法がサコーメソッドで、基本はお尻と太もも、下半身の大きな筋肉を鍛えることと柔軟性を保つこと。
ストレッチや筋肉増強トレーニングが中心になる。
トレーニングは一人でもできるが、高齢者が継続することは難しい。
適正な運動を計画し管理してくれる専門家がいて、マシンを備えたパーソナルジムの設置が安全な訓練には欠かせない。
愛知県宇和島市に近い愛南町(酒向さんの出身地)に7月、地方で初めてサコーメソッドを導入し筋肉革命ジムがオープンした。
理学療法アスレチックトレーナーが常駐し、人口1万8000人の町だが、利用料金は月額1万円、すでに130人の入会者がいるという。
多くの人に利用してもらうには、料金を安く設定することやトレーナーの育成が急務。
トレーナーは現在50人ほどだが、全国に普及するには2000人が必要と、筋肉や骨と脳は50歳を超えると衰え始める。
50歳以上の希望者がトレーニングに取り組める環境づくりが必要だ。
酒向正春(さこう・まさはる)回復期リハビリテーションセンター「ねりま健育会病院」(東京都)院長。
できるだけ早い段階ではリハビリ治療を開始する。「攻めのリハビリ」を推進。
高齢者や後遺症を持った人にやさしい街づくり「健康医療福祉都市構想」を提唱し、都内をはじめ各地で都市整備を実施している。

