地上最も暑い夏が3年連続で訪れ、地球温暖化の影響はますます顕著となっている。
人や物が集まる都市部はエネルギーを大量消費し、世界の二酸化炭素(CO₂)の約7割を排出している。
暑さや豪雨などによって社会や人々が受ける影響も甚大で対策が必要だ。
国連によると2050年には世界の人口の68%が都市部に集中すると推計される。
アスファルトやコンクリートは熱を溜め込みやすく、エアコンの排熱や風通しの悪さもあって高温になりがちだ。
そこに温暖化が重なれば、まさに灼熱状態となる。
被害軽減の鍵ともいえる都市部の気象を精密に予測し制御する研究が進められている。
神奈川県の海洋研究開発機構 (海洋機構)は 人が作った都市だからこそ、人の手で被害の緩和や解決の方法を考えるべきだと主張。 都市の特徴に応じた温暖化対策の必要性を訴える。
海洋研究開発機構(JAMSTEC ジャムステック)
一般的な天気予報は数キロから数十キロ単位のシュミレーション結果が使われるが、海洋機構は1メートル単位で気温を予測する手法を開発。
気象の計算が得意なスーパーコンピューター「地球シミュレータ」により建物や道路の素材や配置、樹木の植え方で温度がどう変わるか詳細に計算できる。
都市の構造部や樹木が気温に与える効果が事前に分かれば、まちづくりに取り入れやすくなる。
実際に都市計画にも活用された。
19年ラグビーワールドカップの会場となった熊谷スポーツ文化公園では 園内の道沿いに、互い違いに樹木が植えられた。
熱中症への厳重警戒を表す「暑さ指数 28以上」の場所を約20%減らせるとの計算結果を踏まえた。
温暖化は暑さに加え、極端な豪雨を増やす。
都市部ではさらに人の活動から生まれる熱で局所的に積乱雲が発達し、エリア豪雨が起こりやすい。
アスファルトに覆われた地表は水が浸透しにくく、洪水の被害が深刻化する。
京都大防災研究所などのチームが研究するのは、災害級の豪雨を数時間前までに予測し、人為的に雨量を減らす「気象制御」のシステムだ。
京都大学防災研究所
海の上に1キロ四方のポリエステル製の洋上カーテンを貼り、水蒸気の流入を減らしたり、洋上風車で風の流れを変えたりする案を検討している。
雲にドライアイスを散布して雨量の成長を抑制し、ビルの上に設定した巨大な送風機で熱を逃がして、上昇気流の発生を抑える構想もある。
急速に変化する年の雨雲を予測するには精密な観測データが必要だ。
牛尾 知雄大阪大教授らのチームが開発した次世代レーダー「MP-PAWR」は高い解像度が自慢。
現在、主流のレーダーでは観測が難しい局所的な雲も扱え予測制度を向上させるこうした研究は昨年の大阪・関西万博で生かされた。
7月から8月には海洋機構などが会場内の暑さ指数の分布を予測し、事務局側に毎朝提供。
大阪大などは開催期間中、大阪府吹田市と神戸市にある2台の MP-PAWRを使い、30分先までの雨予想をスマートフォンアプリ「3D雨雲ウォッチ」で配信した。
雷の注意喚起にも利用された。
早く正確な予測ができれば、避難したり止水板を立てたりして、命や財産を守る余裕ができる。
局所的には豪雨被害から解放される。
温暖化が健康に及ぼす影響は大きい。
温暖化がなくても暑い夏はあるが、温暖化によって尋常でない暑さが増えていることが明らかになってきている。
都市部は人口が多く被害を受ける人も受ける人数も多い。
熱中症による死者は増加傾向で、ここ数年は日本全体で毎年1000人を超える。
さらに持病の悪化など、暑さが間接的に影響して亡くなる人を含めた、暑熱関連死はその7倍程度。
今世紀期末には10年代の3倍になるとの予測もある。
メンタルヘルスの悪化や感染症を媒介するかなどの生物の活動が活発になる懸念もある。
気候危機は健康危機だ。
健康をどう守るか?
エアコンの使用が暑さによる健康影響のリスクを下げることは間違いない。
自宅でエアコンの使用が難しい人に暑さをしのいでもらうため、自治体が図書館や商業施設などをクーリングシェルターとして開放する取り組みも広がっている。
ただしエアコンに使用する電気を、温室効果ガスを出さない発電で賄えなければ、温暖化を成長してしまうことも事実だ。
都市部では室外機からの排熱がさらなる高温化の要因にもなる。
健康と温暖化対策の両立は難しい。
人の健康には健全な地球環境がなくてはならない。
プラネタリーヘルスという考えがある。
プラネタリーヘルスは地球環境(惑星環境)と人間の健康との交互作用を理解し、地球全体の持続可能な未来を構築するための学際的な学問分野と定義している。
欧州では 医療分野の関係者が率先して温室効果ガスの削減や啓発に努めている。