権利擁護支援者の養成を目的として令和5年度から権利擁護支援者養成講座基礎編Ⅰを受けている。
基礎編Ⅰは2日間で高齢者や障害者の理解に関すること、関係諸制度、日常生活自立支援事業、成年後見制度など支援に必要な基礎知識を学ぶ。
<日時>1日目:令和5年11月30日(木)、2日目:令和5年12月4日(月)
基礎編Ⅱは権利擁護支援者養成講座基礎編Ⅰの修了者等のスキルアップを目的として、令和6年度権利擁護支援者養成講座基礎編Ⅱを受けた。
<日時>1日目:令和7年3月5日(水曜日)、2日目:令和7年3月7日(金曜日)
長岡市の趣旨は長岡市地域福祉計画において、地域住民には地域の権利擁護を必要とする方の早期発見や見守り、権利擁護支援の担い手の役割が期待されている。
また、令和4年3月に閣議決定された「第二期成年後見制度利用促進基本計画」においても権利擁護支援の担い手確保に向けた取り組みが必要とされている。
そのため、権利擁護支援の担い手を確保するための市民後見人養成を将来的に見据え、地域で権利擁護支援を担う人材や日常生活自立支援事業の生活支援員及び法人後見支援員の養成を目的として、先に開催した基礎編Ⅰの修了者等を対象に本講座を実施するためである。
主催は長岡市成年後見センター(長岡市から長岡市社会福祉協議会が運営受託)である。
今回、受講した権利擁護支援者養成講座基礎編Ⅱの二日目の意思決定支援(講義、演習)は勉強になった。講師は公益社団法人新潟県社会福祉会 権利擁護センターぱあとなあ新潟。
「成年後見はやわかり」で検索すると労働厚生省のホームページが出てきます。成年後見人制度とは、意思決定支援とは、また動画で実際の支援・活動の様子を知ることができる。
労働厚生省「成年後見はやわかり」
成年被後見人の不法行為責任と成年後見人の責任
精神上の障害により判断能力の欠く常況に有る者を支援するための仕組みが成年後見の制度です。
判断能力の欠く常況に有る者について、家族などが家庭裁判所に申立てをすることにより、成年後見人が選任されます。
成年後見人が選任された本人を成年被後見人といいます。
この成年後見人には弁護士や司法書士などの法律専門職が選任されることもありますが、家族などが選任されることもあります。
■成年被後見人が事故等を起こした場合における本人の責任
成年被後見人が外出先などで事故をおこしてしまい、第三者に損害を与えてしまった場合、事案によってはその責任を成年被後見人(本人)に問いうるかという点が問題になることがあります。
民法の大原則として、故意又は過失によって第三者に損害を与えた場合、損害を与えた加害者はその損害を賠償しなければなりません。
この加害者の責任は、民法709条に規定された不法行為責任という責任です。
民法は、713条本文において、精神上の障害により事故の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は不法行為責任を負わないと定めています。
民法709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
民法713条 精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。
ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときはこの限りでない。
そこで、成年被後見人が外出先などで事故を起こしてしまった場合、この713条の適用により成年被後見人が責任を免れるのではないかが問題となる。
この点、成年被後見人は精神上の障害により判断能力の欠く常況に有るという前提で選任されています。
そして、判断能力を欠いているのであれば責任を弁識する能力(行為の違法性を認識する弁識力)のではないかと思われるかもしれません。
しかし、成年後見制度が前提とする判断能力と不法行為責任における責任能力は必ずしもリンクしません。
また、成年被後見人の精神上の障害の程度もそれぞれ異なります。
そのため、成年被後見人であるからといって常に民法713条の適用により成年被後見人が不法故意責任を免れるのではなく、個別の事案ごとに成年被後見人の責任能力を判断していくということになります。
具体的には、精神障害の程度に関する医師の判断や日常生活における成年被後見人の行動などを勘案し、本人がその行為の違法性(不注意による過失事案も含む)を弁識できたか否かにより判断していくことになります。
■成年被後見人が事故等を起こした場合における成年後見人の責任
成年被後見人が事故等を起こしてしまった場合、本人のみならず成年後見人が責任を問われることもあります。
成年後見人だからといって、本人が第三者に与えた責任を直ちにあるいは当然に負わなければならないということではありません。
成年被後見人に責任能力があると判断される場合と責任能力がないと判断される場合に分けて、成年後見人が責任を負いうるケースにつき説明します。
■成年被後見人に責任能力があると判断される場合
成年被後見人に責任能力があると判断される場合、民法713条は適用されません。
そのため、成年被後見人は民法709条の条件を満たす限り、不法行為責任を負います。
この場合、成年被後見人本人が責任をとることになるわけですから、成年後見人の責任まで問わなくてもよいように思われます。
しかし、成年被後見人の収入や資力などによっては、成年被後見人において賠償しきれないという場合もあります。
こうした事情等から、成年後見人が被害者の方から責任を問われることがあるのです。
その場合、成年後見人の責任の根拠となる規定は民法709条です。
そして、民法709条を適用する上での判断の分かれ目になるのは、成年後見人自身に過失(注意義務違反)が認められるか否かです。
この点に関し、近時、議論が動いているものの、本人だけでなく、成年後見人による過失も事故を惹起せしめたとして、損害賠償責任が問われうると考えられています。
■成年被後見人に責任能力がないと判断される場合
成年被後見人に責任能力がないと判断される場合、民法713条の適用により本人は責任を免れます。
この場合においても、成年後見人が民法709条規定の過失等の条件を満たす場合、やはり成年後見人は民法709条により責任を負うこととなります。
また、成年被後見人に責任能力がないと判断される場合、成年後見人の責任については、さらに民法714条の適用が問題となり得ます。
民法714条<第1項>
前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
<第2項>
監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。
民法714条1項本文は、責任無能力者(責任能力が無い者)の不法行為に関し、法定の監督義務者(法定監督義務者)が責任を負うと定めた規定です。
成年後見人が、この法定監督義務者に該当する場合には、条文上、成年後見人は賠償責任を負うことになります。
この点に関し、成年後見人は法定監督義務者に該当すると理解されていました。
平成28年3月1日、最高裁判決が成年後見人であるというだけでは、法定監督義務者には当たらないと判示しました。
民法に規定されている成年後見人の主要な義務は本人の身上に配慮する義務であり、成年被後見人を「監督」する義務ではないというのがその理由です。
成年後見人であるというだけでは民法714条の責任は負わないものの、成年後見人が日常生活等において成年被後見人を監督することを現に引き受けていると評価されるような場合には、成年後見人にも責任が問われうることには留意が必要です。