体の病気と違い、心の病気の回復はとてもゆっくりです。

うつ病の治療や療養を始めてもすぐに症状は治まりません。

 

ようやく2週間くらいから少しづつ改善がみられるようになります。

1っか月くらいたつと気分がよくなりますが、まだまだ気力は出てきません。集中力も戻りません。

病状にもよりますが、本来のペースを取り戻すまでに、半年から1年以上かかる場合もあります。

こんな感じにゆっくり回復するものですから、病気を抱えて、どのような治療期間を過ごしたらよいのか悩んでしまいます。

また不安や焦りの症状のために、知らないうちに病気に悪いことをしていることもあります。

それで回復を遅らせてしまい、後から後悔することもあります。

うつ病の治療中に不安や焦りなどの症状から、やってしまいがちなことを紹介します。

治すために無理をすることやめましょう。

うつ病は糖尿病などの生活習慣と同じくらい多い病気になりました。

 

そのためにいろいろな知識が雑誌やネットで紹介されています。

朝早くおきて日に当たる、散歩をする。たんぱく質を多く食べるなどやったほうがいいことがたくさん紹介されています。

しかし、そもそもうつ病とは普段できることができなくなる病気です。

 

何かをやったほうがいいといわれてもすぐにはできません。

いつの間にかやらなきゃ治らないという思いになって、自分を追い詰めてしまったり、できない自分を責めてしまうこともあります。

やりたいことができないから治療を受けているのです。無理をしたから治るものでもありません。

 

何よりも無理をせず、休養することが治療です。

確かに、散歩や朝日に当たることは病期に良いことですが、余裕をもって気持ちよくできるようになってから始めましょう。

考えすぎはよくありません。

治療や療養を始めても、お金のこと、復職のこと、家族のこと、いろいろなことが気になり、頭の中をぐるぐると回っています。

実はこれもうつ病の症状なのです。

 

病気によって答えの出ないことを考えさせられているのです。

答えがないのですから、いくら考えても終わりはありません。

 

また、なんでこのようなことになってしまったのだろうと後悔するのも症状です。

後悔すればするほど、あの時こうしていれば、あれをやらなければと自分を責めて、うつ気分がどんどん悪くなります。

考えすぎや後悔はやめましょう。何の得もありません。

 

考えが止まらないときは体を動かして意識を他へ向けることが大切です。

ストレッチをする、近所に散歩に出てみる、カフェでコーヒーを飲んでみるのもいいでしょう。

 

これができないならば抗不安薬を利用するのがよいでしょう。

人と比べるのはやめましょう。

うつ病の症状で自己評価が低くなり、自分はダメな人間だと思い込んでしまうことがあります。

そんな時、SNSで輝いている人を見つけるとつい自分と比べてしまい余計惨めになります。

自分を責めることで何の得もありません。

 

SNS断ちとまでは言いませんが、うまくいっている人のことは視界に入れないようにしましょう。

人生には波があるので常にうまくいく人はいません。今輝いている人も数年後はどうなっているかわかりません。

休職中、めったにない休みだから有意義に過ごさなくてはと考える人がいます。

 

効率を優先し、療養中なのに仕事や次のことを考えてしまうのです。

こうした効率優先の考え方が自分を追い詰め、うつ病になったのかもしれません。

 

特に多いのが、休職中に何かの資格を取ろうと勉強をすることです。

しかし、うつ病は集中力が落ちる病気でもあります。いざテキストを開いても内容が頭に入ってきません。

できないことで焦ったり、受講料を無駄にすることで自分を責めてしまうことがあります。

うつ病の療養中は資格を取ることや、習い事はやめたほうがよいでしょう。

心配した家族や友人から気話に旅行を誘われることがあります。

 

また、家族で、ゴロゴロするよりは憧れの場所でゆっくりするのもありかなと考えてしまうことがあります。

実際に休職中に旅行に出る人は多いですが、ほとんどの場合病状がよくなるどころか悪くなって帰ってきます。

 

旅行先で眠れなかったり、トラブルに巻き込まれたり、一緒に旅行した人と揉めてしまったり、余計に疲れてしまうこともあります。

 

療養中の旅行はおすすめではありません。

うつ病の回復期に一時的に気分が大きくなることがあります。

 

頑張ってきたご褒美だ、元気になってまた稼ぐから大丈夫と、大きな買い物をする人がいます。

女性ならブランド品や装飾品、男性なら時計や車です。

 

しかし、うつ病は予定通りに回復しないことがあります。支払いやローンの負担から病気の回復が遅れてしまうことも起こります。

なんでこんなものを買ったのだろうと後悔しないように、療養中の大きな買い物は控えましょう。

また、人生の一発逆転を狙って宝くじや株などの投資に大金をはたく人もいます。

 

残念ながら病気の時は運も回ってこないものです。最終的に自分を追い詰めるだけですから投資はやめましょう。

大きな買い物に似ていますが、療養中に引っ越しをする人もいます。

 

今の住まいに嫌な思い出があり、いつか引っ越したいと思っていたので、この休職を利用するという理由が多いようです。

 

しかし、引っ越しには大きなエネルギーが必要です。また新しい街での生活にも慣れなくてはいけません。

大きな事情がない限り、引っ越しはしないで、今の住まいでの生活を続けたほうがよいでしょう。

職場での燃え尽きが原因で発病した場合、もう会社のことは思い出すのがつらい、早く縁を切りたいと思うのは当然です。

 

でも、すぐやめてしまうのはちょっと待ちましょう。

 

会社との契約にもよりますが、1年ぐらいの休職は可能ですし、休職中も傷病手当を利用すれば、給料の3分の2は受け取ることができます。

 

復職をしない限りは、傷病手当は1年半利用することができます。

最初のころこんな会社さっさと辞めてやるという感じでも、症状が治まるにつれて考え方は変わっていくでしょう。

 

人の出入りがあって、復職するころには職場の雰囲気も変わっているかもしれません。

 

会社を辞めた場合、再就職するには大変なパワーが必要です。治ってからでないと再就職は難しいでしょう。

事情があって転職を決めているのにしても、今の会社の休職期間を利用して十分回復してからにしましょう。

 

ともかく感情に任せて会社をすぐに辞めてしまうのはよくありません。

ある程度回復してくると病気が治ったと感じて、薬を飲むことに意味を見出せなくなります。

 

ちゃんと飲んでいますと担当医に言いながら、実は飲まなかったりしている人もいます。

うつ病は一度治っても半数近い人が再発するという統計データがあります。

 

特に治ったと感じてからの1年くらいがもっとも再発しやすい時期です。

うつ病の薬には予防効果もあります。担当医がやめましょうと言うまではきちんと続けたほうが良いです。

 

うつ病は生きるエネルギーが消耗した状態です。

治すために何よりも心の充電が必要です。規則正しい平凡な時間を過ごすのがよいです。

寝る前に一日を振り返って、今日も建設的なことは何もできなかったなと落胆する人もいるのですが、そうではありません。

何もしない一日こそが回復につながっているのです。