脂肪と聞くとなるべく取らない方がよいものと思われている方もいるでしょう。
脂質の取りすぎはよくない。
その理由は、脂質の摂取が多い食生活を送っていると、動脈に脂肪が蓄積してしまい。
やがて、心臓発作の原因となったり、肥満の原因となってしまう。
その認識は正しいものであるとは言えますが、偏った認識であるとも言えます。
脂肪とは、私たちにとっては不可欠なものだからです。
私たちの体の細胞、臓器、脳は、脂肪でできており、それらが正常な働きをするためには、良質な脂肪が必要です。
細胞膜の原料も、体の機能を整えるホルモンの材料も脂肪です。
ビタミンAなどの脂溶性ビタミンが体に吸収されるのを促進するのも脂肪です。
また脂質は、1gあたり9kcalであり、1gあたり4kcalの糖質やタンパク質と比較すると、2倍以上のエネルギー効率があります。
脂肪が少なすぎると、髪の毛、肌は血行を悪化させ、血管、免疫機能も衰えていきます。
脂肪が体の健康にとって悪影響を及ぼす可能性があるというのもまた事実です。
それでは一体、何が正しい知識と言えるのでしょうか。
脂質に関する疑問は、脂質の種類について詳しくなれば解決します。
オメガ3の代表的な脂肪酸は、α-リノレン酸とDHAとEPAですが、α-リノレン酸は主に亜麻仁油など、DHA、EPAは主に青魚に含まれています。
そして、トランス脂肪酸の代表例としては、マーガリン、ショートニングなどです。
さらに詳しい解説を加えますと、長鎖・中鎖・短鎖の違いでいうと短い方が抗炎症性があります。
また、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸の違いは、酸素による酸化ダメージが加わる箇所が、一箇所か複数箇所あるかの違いです。
酸化しにくく安定しているのは、飽和脂肪酸で、次に酸化しずらく安定しているのは、一価不飽和脂肪酸、そして最後が多価不飽和脂肪酸です。
オメガ3系は、多価不飽和脂肪酸ですが、抗炎症作用があります。
どの脂質が良くて、どの脂質が悪いのか。
まず、真っ先に取らないに越したことはない脂質は、トランス脂肪酸です。
トランス脂肪酸は、産業用に無理やり固形化させた油であり、体内での消化、分解が困難で、毎日の摂取カロリーに占める割合が1~2%だとしても、血中の脂質値を大幅に上昇させ、心臓疾患や突然死のリスクを高めると言われています。
代表例としてはマーガリン、ショートニングです。ショートニングはクッキーやパンに使われる食用油脂のことです。
その他の脂質についてはどうすればいいのかというと、飽和脂肪酸とオメガ6系の脂肪酸の過剰摂取は、健康上の悪影響を及ぼします。
つまり、牛肉や豚肉、乳製品といった動物性の脂質である、飽和脂肪酸の過剰摂取、サラダ油など、オメガ6系の脂質の過剰摂取は体に脂肪を溜めやすく、動脈硬化・脳卒中・心筋梗塞・ガンなどのリスク要因となりえます。
オメガ6系の脂肪酸は酸化して、痛みやすいため、好んで食べていると必然的に酸化した食品を摂取する確率が高まり、体に炎症を起こし、老化や肥満などの原因となります。
飽和脂肪酸の例外としては、ココナッツオイルやMCTオイル、またグラスフェッドのバターなどは、飽和脂肪酸の中でもエネルギーとして燃焼されやすい性質をもつ、中鎖脂肪酸が豊富に含まれているため健康に良いとされています。
一価不飽和脂肪酸と、オメガ3系の脂肪酸は、一般的には積極的にとっていきたい脂肪酸であると言えます。
一価不飽和脂肪酸で、オレイン酸を豊富に含むオリーブオイルやアボカド、オメガ3系のDHA・EPAが豊富に含まれる青魚やα-リノレン酸が豊富に含まれる亜麻仁油などです。
これらの脂肪酸は、炎症を緩和・抑制したり、血中の悪玉コレステロール値を下げる働きがあるだけではなく、精神を安定させ、記憶能力や学習能力を高めたり、脂肪の増加を防いだり、肌や髪が乾燥するのを防ぐ働きがあるとされています。
ここで注意を喚起しておきたいことは、動物性の脂肪とサラダ油は徹底的に排除して、オリーブオイルとDHAのサプリとココナッツオイルだけ食べるというのは、極端な行動であり、脂質以外の栄養素への視点がまるっきり抜けてしまっています。
実際、オメガ6系の脂肪酸は、適量であればむしろ健康的には良い影響があるとされています。
ただ現代では揚げ物を始め、あらゆる食品にサラダ油をはじめとしたオメガ6系の脂肪酸が使われているため、過剰摂取になりがちなので控えめにした方が良いというのが正しい認識です。
ココナッツオイルに関しましても、最近では、むしろ健康上マイナスの要因の方が多いという研究発表もあり、ココナッツオイルに対して過度な信頼を置くのは危険であると言えます。
厚生労働省の日本人の食事摂取基準における脂肪の摂取目安を紹介しておきます。
食事から摂るカロリーのうち、約20~30%は脂肪から摂るのが好ましく、飽和脂肪酸の割合は食事全体の7%以下にとどめ、オメガ6系は約8~10g、オメガ3系は約1.5~2gと記載がされています。
目安としては参考になるのではないでしょうか。