運動することで脳細胞が育ち、結果として認知能力や情報処理能力が向上します。

運動は人間が行うありとあらゆる学習を細胞レベルで強化するといえます。

何かを学習するというのは、脳においては情報を伝達する役割を持つ、脳細胞同士の結びつきを新しく作ると同時に、その結びつきを強くしていくということを意味しています。

筋トレをすると筋肉が強くなっていくと同じように、脳も情報を取り込めば取り込むほど鍛えていけるということです。

脳というのは、生まれながらにその能力が決まっていて、成長のピークを過ぎ、年をとっていくにつれて衰えていくものではなく、後から鍛えて強くすることができるということです。

このことと運動とが大きく関係しているのです。

一体どうして運動することが脳を鍛えることにつながるのでしょう。

その仕組みを理解するためには脳由来神経栄養因子(BDNF)を知る必要があります。

BDNFの役割を説明するならば、脳細胞の機能を向上させ、その成長を促し強化し、細胞が死んでしまうのを防ぐ役割を担っています。


イメージとしては脳細胞を育てる肥料のような役割をしている物質であり、脳内の細胞同士の連結を、都市の道路網に例えるならば、その道路を整備し工事しているといえます。

運動することによって、この BDNF が頭の中で増加するだけではなく、インスリン様成長因子(IGF-1)、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF-2)といった脳細胞を新たに生み出し。

また、脳細胞同士の結びつきを強固なものに作り変えていくホルモンも一緒に増加させるということです。

簡単にそれらのホルモンについて説明をするとインスリン様成長因子(IGF-1)や線維芽細胞増殖因子(FGF-2)は脳細胞を活性化させ。

脳細胞同士の結びつきを強くする役割を持ち、血管内皮増殖因子(VEGF)は新しい毛細血管を作り、このことが新しい脳細胞が生まれてくることと関係しているのではないかと考えられています。

運動によって脳細胞が新たに生まれるだけではなく、その結びつきが強くなり、脳内での情報伝達のスピードおよび記憶の定着効率が格段にアップするということです。

そして、運動によって強化された脳細胞同士の繋がりというのは、運動以外の領域にも応用されていくということが分かっています。

例えば、空手やダンスを習っている人は、最初は複雑で難しいと思えたような動きを繰り返し行い、習得することでその動きをもっと複雑な動きの中に取り入れることができるようになるわけです。

そうしたプロセスで鍛え上げられた脳細胞同士のつながりというのは、他にも数学の問題を解くときであったり、仕事上や人間関係上のトラブルを解決する際などにも応用されることが分かっています。

つまり、運動するということは生活全般における情報処理能力を高めるということにつながるわけです。

いったいどのような運動すると脳機能を高めるメリットを最大限に生かすことができるのか。

脳機能を高める運動とは、結論としてはどんな運動でも大丈夫です。

息が少し苦しくなり、自分で運動していると感じられるのでしたら、何であってもこの仕組みは働きます。

その上でより効果的な運動は何かというと。

それは有酸素運動と複雑な動きが必要な運動を組み合わせるということです。

有酸素運動をすることで、脳内で脳由来神経栄養因子 (BDNF)を増やし、成長因子を送り込む新しい血管を作り、新しい細胞を作り始めます。

そこに複雑な動きが必要な運動を組み合わせることによって、脳細胞同士のつながりを強くしていきそれをうまく使えるようになっていきます。

そしてこうした運動によって作り出された脳細胞同士のつながりというのは、空手やダンスの例のように他の思考領域にも作用されるのです。

ちなみに複雑な動きというのは、走るという手と足を前後に繰り返し動かす動作よりも、複雑であれば複雑な動きが必要な運動であるとしてもよいでしょう。

例えばテニス、サッカー、キャッチボールといった球技、またボルダリングやダンスが効果的です。

もちろん筋トレも効果的であり、脳機能を高めるという観点からは、毎回決まったメニューというよりは色々なメニューを取り入れるとよいでしょう。

運動する時間に関しては、30分のジョギングを週に2、3回を2週間行っただけで、脳機能の向上が見られたという研究もあるように。

 

毎日数時間行う必要性はなく、週に3回程度20分から30分程度体を動かす時間を確保するだけでも十分に効果が期待できます。