認知症の人の尊厳を大切にするフランス生まれのコミュニケーション技術が、介護者のストレス軽減にも効果があるとしている。

 

介護する家族だけでなく、施設職員の職場の人間関係改善に役立つといった声も。

 

対人関係の技術として身に付けられるだけに、応用範囲は広そうである。「ユマニチュード」と呼ばれるこの手法は、2012年ごろから日本でも導入され始めた。

 

「視線を合わせ続ける」「穏やかに話し掛ける」「腕や足をつかまない」などを組み合わせ、認知症の人と信頼関係を築くのが特徴。

 

寝たきりを防ぐため、立つ機会を増やす支援をする介護のプロ向けに開発されたが、介護者の負担減にもなるといった指摘があった。

 

そこで、東京医療センターの本田美和子医師らが、16年度に福岡市で認知症高齢者を自宅で介護する148人を対象に調査。

 

2時間の研修後も習った内容を実践できるよう、部屋に入る時はノックして知らせるといった具体的な助言を送った。

 

その上で研修前と後の数値化のした介護負担感の変化を調べると、ストレスが改善。介護される側の暴言や徘徊も減ったという。

 

県内でも導入している施設がある。

 

加茂市の介護老人保健施設「さくら苑」では14年から、職員が講演会や書籍で学んだユマニチュードの手法を介護の現場で活用している。

 

認知症の人は話し掛けても反応がないことがある。介護スタッフが風呂やトイレに連れて行こうと声を掛けずに腕をつかんだりした際、抵抗されることは少なくない。

 

職員にとっても、介護拒否や抵抗がストレスになり、離職の一因になっているとも言われている。

 

さくら苑では「しっかり相手の目を見てから話し掛け、自分をしっかりと認識してもらう」「相手に触れるにしても広い面積をゆっくりなでるようにする」といったことを実践。

 

入所者の反応が明らかに変わり、介護時の拒否や抵抗が目立ってなくなった。一方、病院や介護施設の職員からも自身の行動や周囲との関係が変わった。

 

横浜市の特別養護老人ホーム「緑の郷」ではケアを嫌がる90代の男性に半年間、ユマニチュードを取り入れたところ、職員が自主的に利用者のレクリエーションや歩行練習に取り組むことが増えた。

 

入所者と向き合おうとすることで、モチベーションが上がったのではと分析する。

 

さくら苑でも、職員がそれまで苦手に感じていた認知症の入所者と笑顔で話をするようになったり、「うまくいった」「自信が出てきた」と自信や喜びにつながる成功体験を共有できるようになったりしたという。

 

ユマニチュードは相手の人格を尊重することが基本なので、どんな職場でも役立つ。

 

触れるのはセクハラと取られる恐れがあるため勧められないが見る、話す技法は、互いが前向きな言動に変わるきっかけになる。