日本の伝統的食文化とされる「和食」。

 

2013年には国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産にも登録された。

 

しかし、伝統的だからといって健康的だとは限らない。

 

実際、改善の余地があることが最近の研究で分かってきた。

 

ご飯を中心に、肉や魚、野菜、海藻、豆類など多様なおかずを組み合わせる、というのが和食の一般的な特徴だ。

 

理想的な栄養バランス、うま味を上手に使うことによって動物性油脂の少ない食生活を実現、日本人の長寿、肥満防止に役立っています。

 

もっとも、和食が長寿や肥満防止に役立っていることを裏付ける直接的な証拠はない。

 

伝統的な和食には、塩分が多い、カルシウムが少ないという弱点がある。

 

多すぎる塩分が高血圧のリスクとなることは、1990年代に欧米の研究で明らかにされた。

 

国立がん研究センターや九州大の研究で、食塩摂取量が増えると胃がんの罹患率と死亡率が増えるという結果も出ている。

 

カルシウムは骨を丈夫にするほか、日本人女性のがん死亡で最も多い大腸がんを予防する要因であることがほぼ確実とみられている。

 

和食には肉や乳製品に豊富な飽和脂肪酸が少ないという特徴もあり、これは弱みでもあり強みでもある。

 

国立がん研究センターなどが国内の約8万2千人を追跡した研究で、飽和脂肪酸の摂取量が少ないと、心筋梗塞を発症しにくくなる半面、日本人に多い脳卒中のリスクは高まることが分かった。

 

多過ぎても少な過ぎてもよくないわけで、バランスを取るには和食をベースに肉や乳製品を適度に取ることがポイントです。

 

和食にはもう一つ大きな課題がある。

 

それはご飯だ。

 

同センターなどが国内の約6万人を5年間追跡し、1日に食べるご飯の量と2型糖尿病との関係を分析したところ、ご飯を多く食べる女性で発症リスクが高まるという結果が2010年に出た。

 

12年には米ハーバード大のチームがこの研究や米国、中国などでの同様の研究をまとめて分析。

 

白米の摂取が多いと、やはり発症リスクが増すことが確認された。

 

白米は食後の血糖値が上がりやすいほか、糖の吸収や代謝に関わる食物繊維やマグネシウムなどが、精米で失われるためだと考えられるという。

 

英国などのチームが世界中の疫学データをまとめた研究で、米や小麦など穀物の食物繊維は心筋梗塞など心血管疾患やがんの死亡リスク低下に関連することも分かった。

 

低糖質ダイエットブームで穀物から取る食物繊維が減っていないか心配だ。

 

精米度を低くしたり雑穀をまぜたりすることで、米を主食とする和食の栄養学的な質は高まる。