うつ病は実は、高齢者に多い。

 

適切な治療で回復が見込めるが、放っておくと重症化し、体の機能が衰えて介護が必要になったり、自殺につながったりする恐れがある。

 

早期発見・治療が大切なのは、他の疾患と一緒だ。

 

厚生労働省の調査によると、「うつ病を含む気分障害の患者数」は111万6千人(2014年)。このうち65歳以上は約34万人で、全体の3割を占める。

 

海外の調査では、高齢者の13.5%が「うつ状態」とのデータもある。

 

国際的な指標にもなっている米国精神医学会の診断基準では、「抑うつ気分」もしくは「喜び・興味の喪失」を含め、「集中力低下」「罪責感」「焦燥」「不眠」「体重低下」「死への思い」「疲れやすさや気分の減退」などのうち、5項目以上がほぼ毎日2週間以上続き、日常生活に支障がある状態をうつ病としている。

 

配偶者や親しい人との死別、介護疲れや孤立、病気などをきっかけに、高齢者は誰でもうつ病になる可能性がある。

 

県が昨年8月、県内の65歳以上の男女3500人を対象に、健康状態を尋ねた高齢者基礎調査(郵送、有効回収率69.8%)では、半数近くの45.4%が「心の不調を感じたことがある」とした。

 

このうち65.6%が「生きるのがつらい・嫌だと感じたことがある」と回答している。

 

高齢者のうつ病は体の不調を訴えることが多く、最初は内科などに行くことが多い。精神科への紹介は1割程度というデータもある。

 

そもそも日本の医師には、高齢者のうつ病への認識が低いことも背景にある。こうしたことから受診、診断まで時間がかかり、うつ病を重症化させてしまう高齢者が少なくないという。

 

日常生活に支障を来たすようになってからだと、治療を受けても回復に時間がかかったり、体力の低下などで衰弱して寝たきりになったりすることもある。

 

孤立し、絶望した結果、最悪のケースでは自殺につながることもある。