吠えまくるワンちゃんに対して行動療法を行うとどういう風に
治療経過がなされていくかという話題です。
あくまで例です。
1:初診時から10日まで
治療経過があまり治療前と変化がない。
飼い主からはSOSのメール。
治療開始時は薬の種類や用量、各種治療プログラムの遂行具合を
詳細にチェックして修正していく必要がある時期です。
数日間で劇的に症状が改善することはまずないと考えるべきです。
行動診療はカウンセリング技法がとても重要だとされています。
獣医師が患者さんの言葉を肯定的に捉えることが重要です。
正直、通常の診察では話を聞くこともそうですが、話を疑うことも重要です。
避妊手術したというお話を真に受けてしまい、子宮蓄膿症への介入が遅れてしまうなど。
なので行動診療はそういう意味でも通常の病気の診察とは少し趣が異なるかもしれません。
このあたりは想いを受け取りながら、行動評価を客観的に冷静に行っていく必要が獣医に求められます。
2:初診から20日後
少しずつ鳴く時間が短くなり、夜眠れるようになった。
雷がなった日だけ鳴いてしまったが、その後はまた寝ることができている。
自宅での落ち着いた行動が目立つようになった。
破壊行動は消失した。
3:治療プログラムの追加や変更
水が置いていない環境であることが発覚し、要求吠えを疑い、水を常備してもらうようにした。
食事内容が日中に少し少ない場面での空腹吠えの可能性があり、日中に食べた量が少ない日は
就寝前に少しごはんを与えてもらうようにした。
刺激音に対し、系統的脱感作、拮抗条件付けを開始。
フルオキセチンを主役にし、トラゾドンを頓服にした。
4:初診から45日後
夜鳴く行動は雷時のみに限定された。
パンティング呼吸と興奮が確認され、それ自体はロラぜパム服用で朝までぐっすり眠ることができた。
血液検査を実施し、ALPの増加が確認された。
5:治療プログラムの変更と追加
血液検査と行動学的評価を受けて、フルオキセチンを1.0mg/kg 1日2回に減量した。
トラゾドンとロラゼパムは頓服利用する。
遠雷時におやつを食べる余裕が生まれたため、このような状況下での拮抗条件付けを提案。
具体的には大好きなオヤツを遠雷時に大ボーナスする。
6:治療開始から100日後
夜中に起きる行動が1度も確認されない。
雷の時にヒーヒーいうがそれ以外は落ち着いている。
頓服薬は未使用の状態。
7:治療プログラムの変更と追加
フルオキセチンを0.8→0.6mg/kgへさらに減量。
といったように続けていきます。
これはうまくいった例を参照に書かせていただいてます。
犬の行動療法、心療内科というとなんとなくスピリチュアルな感じがしますが
イメージだけでかなり理論的に行われています。
実際に通常の治療介入では問題を解決できない例も多くあります。
そういった問題の根本にこういった病名がうまくつけられないような疾患が隠れていることがあります。
(実際に病名はつきます。膵炎とか子宮蓄膿症とかいうキャッチーな診断名がないだけです。)
望月サイドは今後こういう治療に着手していきたいと思っています。
では。