『光る君へ』の喪服の話 | 星野洋品店(仮名)

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とある洋品店(廃業済み)を継がなかった三代目のドラマ感想ブログ

第22回では、道長と定子、清少納言が鈍色(にびいろ。濃い鼠色)の喪服姿でした。当時は親の喪なら1年間、それ以外の親族なら三十五日か四十九日の法要まで喪服を着ていたようです。

 

唯一の后としてときめいていた定子ですが、じつは喪服を着ている期間が長かったのです。990年の入内後まもなく祖父 兼家が薨去。991年には一条天皇の父 円融院の崩御によって1年間の諒闇(りょうあん。天皇の服喪)。995年4月に父 道隆を、996年10月に母 高階貴子を亡くしています。女房たちまで喪服でズラッと並んでいるのは見た目が楽しくないので、本作では喪服を着せない方針なのかと思っていました。

 

喪中の定子は、1カ月ほどのちに出産を控えています。男の子だといいですね。一条天皇にはまだ後継ぎがいませんから。

 

 

第23回の予告に、春宮 居貞親王(のちの三条天皇)が子どもを抱き上げる姿がありました。じつは994年に長男 敦明親王が生まれていたのです。一条天皇に皇子がないまま崩御なんてことになれば、皇位は居貞親王から敦明親王に受け継がれることになります。

 

以前も書きましたが、63代 冷泉天皇が短期間で退位したため、冷泉天皇系と円融天皇系が交互に天皇になる状態が続いています。

 

63代 冷泉天皇系:65代 花山天皇・67代 三条天皇・(69代予定 小一条院 敦明親王)

64代 円融天皇系:66代 一条天皇・68代 後一条天皇・69代 後朱雀天皇・70代 後冷泉天皇

 

冷泉天皇系のほうが本家筋に当たるため、一条天皇が早期に退位して三条天皇に皇統を返すのが筋ではある。でも、詮子女院としては、夫 円融天皇の血を後世に遺したいんじゃないでしょうか。藤原北家 九条流の弘徽殿女御 義子と承香殿女御 元子を入内させました。

 

ふたりの女御はそれぞれ母と父方の祖母が皇族で、母と父方の祖母が中流貴族の中宮 定子より高貴な血筋です。まあ、誰に子を産ませるかは、一条天皇の決めることなのですが。

 

道長たちとしても、自分たちと同じ九条流の后妃に皇子を産んでもらいたいところです。なぜなら、三条天皇の長男を生んだ宣耀殿女御 娍子は藤原北家 小一条流の出身だから。小野宮流 頼忠(公任の父)・九条流 兼家パパ ・小一条流 済時(娍子の父)がそれぞれいとこ同士の関係です。

 

済時が995年に死去しており、有力な公卿がいない家柄ではありますが、これから三条天皇の引きで出世する余地はあります。九条流が摂関家でありつづけるためには、勝手に出家しやがったという瑕疵はあれど、一条天皇の子を妊娠した実績のある定子を排除できないんだよな~。