ドラマ 蘭陵王 【吹替版】 の話 | 星野洋品店(仮名)

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蘭陵王 【吹替版】 (2013年 中国)

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2023年1月5日付記事で紹介した独孤伽羅~皇后の願い~の裏側の話になります。北周軍に包囲された洛陽城を救うべく、その美貌を仮面で隠した北斉の武将・蘭陵王が、わずか500騎を率いて突入する……という物語。仮面は美貌とか関係なく、本来ただの防具なんですけどね。日本の雅楽にも「蘭陵王」「陵王」「羅陵王」として取り入れられています。

 

蘭陵王・高長恭は北斉の皇族で、じつは本家筋。父が早死にしたので、父の弟・高洋が北斉皇帝になりました。しかし高洋も早死にしてしまう。息子の高殷が後を継いで皇帝になったものの、廃位された上に殺害されます。

 

高殷を殺害して皇帝になったのが高洋の弟・高演。しかしまた、弟・高湛(本作の北斉皇帝)に皇位を譲って早死にする。高湛は約束を破って、兄の子・高百年を殺します。

 

このように、北斉は2代続けて皇帝が甥を殺しているので、たいへん評判が悪い。それを取り返そうとして熱心に仏教を信仰し、寺を建てるための重税を掛けるんですね。根本的にいろいろ間違ってる。本家筋である蘭陵王に人望が集まる余地があるってことですよ。

 

 

罪なくして自害へと追い詰められてゆく蘭陵王に同情するのが本来の見方ではあるんでしょうが、本作の蘭陵王って、あんまカッコよくないんだよな。自分を慕ってくれた女性をストーカー化させちゃったり、ヒロインの危機に間に合わなかったり、無駄に嫉妬したり、むしろヒロインに助けられてばかりだったり。

 

対して、「怪」という役名の人物が、実質ヒーローなんだよね。ヒロインの危機には100%間に合うし、ヒロインの特殊能力を利用したい気持ちはありつつも、彼女の意思を尊重するし。蘭陵王役のウィリアム・フォンですら、「怪役のほうがやりたかった」と述べるほど。

 

「怪」の正体については伏せますが、彼のラストシーンにはグッと来ましたよ。やっぱり、当て馬がカッコいいとドラマは盛り上がる!

 

総合評価は星4つ(見て損はない)ってとこかな。

 

 

 

ついでながら、作中で北周皇后・阿史那氏が象棋(シャンチー。中国式の将棋)をよく指しているのは、彼女の夫・北周武帝が象棋のルールを定めたという伝承があるからです。

 

もう1つついでながら、いわゆる「三武一宗の法難」のひとつ、北周武帝による法難は、本作の設定だと、阿史那氏の嫉妬が原因ってことになるんですね。還俗させられた坊さんたちも浮かばれまい。

 

(注:「さんぶいっそうのほうなん」北魏・太武帝、北周・武帝、唐・武帝、後周・世宗による仏教弾圧をまとめてこう呼ぶ。ここで言う〈法〉は〈仏法〉のこと)